第18回
「それで?」と、私が話し始めた時、ママが強烈な反動で遮り、語りだした。
「ちょっと! これ見てよ、満君…」
ママが語尾を延ばす時は、ほぼ間違いない確率で話が長引くのだ。私は、しまった! と思った。機先を制す、とは正にこのことではないだろうか。まあ、それは兎も角として、ママが指さした背後の酒棚には、なんと一昨日、話題になった水晶玉が飾られているではないか。しかもそれは酒瓶と酒瓶の間に置かれていて、カウンター席に座る私からすれば丁度、正面に見え、妙な違和感を醸し出していた。本来、酒瓶の類は、各種入り乱れてズラリと並んでいるから圧巻なのであって、酒を嗜む場に落ち着きを与えるのだ。私が早希ちゃんに感けて、ついうっかり正面の酒棚を見ていなかったのが原因なのだが 、それにしても何も酒棚に水晶玉なんぞ置かなくてもいいじゃないか…とは思えた。
「なんか場違いでしょ? こんなとこへ置くなんて…」
ママは私の心底が読めるのではないかと思えるほど的確に私の疑問を説明した。
「あっ! 云い忘れたわ。あの客さ、昨日、来たのよ~~。それも閉店間ぎわ。堪ったもんじゃないわ~」
私が訊ねるどころの話ではなくなった。ママは機関銃を連射するかのように、けたたましく続けた。