第147回
『途中になりました。どうです? 私の霊力は。ただし、起きた不幸といいますのは、あなたにとって決して凶事なのではありませんよ。十日ばかりもすれば塩山さん、あなたにも分かって戴けるかと…』
私はポケットへ一端、戻した小玉をふたたび手にした。小玉は黄や緑色の異様な光を発して渦巻いていた。みかんの酒棚に置かれた玉が光った色彩と、まったく同じだった。どうやら、お告げが始まると、点滅を始めて光を発するようだった。
『そうです。私があなたに語りかけたとき、手にお持ちの玉は光を発するのです。それは当然で、私の霊力はその小玉へ届いておるのですから…。まあ、それはともかく、十日ばかり経ちますと、あなたにとっての吉事が会社で起こるでしょう…』
小玉の点滅する速さが次第に遅くなり、輝きも弱くなった。
「あっ! 待って下さい。私から、そちらへ連絡はとれないのでしょうか?」
小玉は、ふたたび光を増して点滅を速めた。
『今はまだ無理でしょう。けれども、沼澤さんが云われたとおり、慣れていかれれば、それも可能となるでしょう』
「そうですか…。それは随分と先で?」
小玉の点滅は止まり、光は消え失せた。そして、お告げもその後、聞くことはなかった。