第145回
相変わらずポケットの小玉は震動し続けていたが、法要が終わるまではどうすることも出来ず、私はもどかしく、やきもきしていた。そうこうして、ようやく法要も終わり、私は解放された。私はセレモニーホールの駐車場に止めた車へ一目散に駆けだした。
「あっ! 課長、△×○…」
後ろで児島君の呼び止める声が何やら聞こえたが、遠ざかる私には、よく分からない。
「急用だっ! あとは、頼んだぁ~!!」
そう絶叫しながら児島君を無視して駐車場へ回り、車へ飛び込んだ。その時、お告げの声がした。
『そう慌てないで下さい、塩山さん』
私は思わず周りを見回した。だが、何も見えず、気配すらない。
『探したって無駄ですよ。私はみかんの、玉の霊です。今、あなたのポケットの小玉を通して話しています。ポケットの小玉を出して見て下さい。今、点滅しているはずです。ああ、そういや、先ほどは申し訳ありませんでした。…人が周りにいましたからねえ』
そこまで聞こえたが、どうした訳か、お告げの声はピタッと止まった。もちろん、その声はいつか云ったと思うが感性の声で、人々に聞こえる声ではないから、誰も気づかない性質のものだった。