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第144回

しかも右ポケットである。右ポケットの中は…と巡れば、小玉以外に入れているものは何もなかった。だから、巡るほどもないひらめきの動作で私は小玉を取り出そうとした。生憎あいにく、前後左右の席とも会社の関係者で埋め尽くされている。私は気づかれぬよう、目立たぬようにと、さもハンカチを取り出そうとする仕草でおもむろにポケットから小玉を取り出し、右手の手の平で握りしめた。小玉は、やはり振動していた。マジックじゃないが、左手をポケットへやり、右には入ってなかったか…という仕草でポケットの中へ左手を入れた。左ポケットにハンカチが入っていることは入れて知っているから、ゆったりと取り出して汗をく仕草をした。幸いにもひたいには汗が幾らか出ていたから一石二鳥だった。そして、拭いたハンカチを下ろして右手にかぶせ、まわりの者の視線をさえぎった。そして、ハンカチの下で右の手の平をゆっくりと開けた。すると、なんと! ハンカチの下で小玉が点滅するかのように時折り光を放ち、輝いているではないか。これは幾らなんでも周囲の者の目に触れれば厄介なことになる…と瞬時に判断し、私はふたたび右手をギュッ! と握りしめ、右ポケットへ小玉を戻した。誰もいない状況ならともかく、法要の真っ最中だから、動きようがなかった。

「※~~¥~~∞~~…」

 読経が終わり、派手な法衣をまとった若い僧侶は静かに立ち、遺族や私達関係者の順に軽くお辞儀をすると、スターのように格好よく、場を去った。

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