第14回
「そうですねえ…。面白いかどうかは分かりませんが、ひとつあるといや、あります」
「ほう…」
禿山さんは丸禿頭を照からせて身を乗り出した。
「いや、これは今朝、早く来たのと関係があるんですけどね。実は、昨晩、あれから飲みに街へ出たんですよ」
「ああ、そういや、昨日は暗くなるまで残っとられましたなあ…」
「ええ…。私の行きつけのスナックがあるのですが、そこで拾った話なんです…」
「ほう、なるほど…。それで?」
禿山さんは椅子へ座り直し、ふたたび身を乗り出した。
「そこのママと店の子が、妙な客が来たと云いましてね。それというのが、どうも占い師のようなんですが、しかし、そうでもないような…」
「えっ? どういうことです?」
「いや、その辺りがはっきりしないから、妙な客だ…ということらしいんですが…。なんでも、この店に近々、幸運が訪れます、とか何とか…」
「はは~ん、インチキまがいって奴ですか?」
「それがどうも、そうでもないらしいんですが…」
「得体の知れん話ですな?」
「はい…。私も実際にその男を見た訳じゃないんで、何とも云えんのですが…」
「怪談にしちゃ、もう秋ですからなあ…」
禿山さんはそう云うと、俄かに相好を崩した。