第135回
「嫌だわぁ~。なんか一億とか当たったみたいじゃない。ホホホ…、云わなきゃ、よかった」
ママは笑って少し後悔したようだった。
「でも、よかったじゃないですか。前回×(かける)3でしょ? …三倍だと、小旅行が中ぐらいにはなりますよね」
「ええ、そりゃまあねえ~。あっ! そんなことじゃなくってさあ。三枚も当たるって、いくらなんでも変じゃない? それでね、沼澤さんに訊いたって訳」
「で、沼澤さんは、なんておっしゃったんです?」
「玉のお告げだと、この店は今のところ、まあ、そんなもんかって…」
「なんか小馬鹿にされた話じゃないですか」
早希ちゃんもママに加勢した。
「そうだなあ~。まあ、そんなものかって云う云い方は少し酷い」
「でしょ?」
私が納得して同調したので、早希ちゃんは鼻息を少し和らげた。
「僕、黙って聞いていたんですが、皆さん先ほどから不気味な話をしてらっしゃいますね。玉のお告げとか…」
「そうだ! ママ、児島君に例の小玉を…」
「そうそう…」
ママは、うっかり忘れていたとばかりに酒棚の隅に置かれた小箱から水晶玉のひとつを取り出し、児島君の前へ置いた。