第133回
「沼澤さんの話のとおりなら、ありよね」
「あり、ですか…」
今一、理解できないのか、児島君は怪訝な表情で訊ねるでなく云った。
「沼澤さんですか…。一度、訊いてみてもいいですねえ。いやね、ママに云われるまでもなく、なんか不気味な感じがしたんです」
事実、私にも児島君の身の上に起きた内容が尋常でないハプニングのように思えていた。
「それがいいわよ。それにしても、こちら、なかなかハンサムじゃないっ!」
ママは私の話より初顔の児島君の方が気になるらしく、話題を変えようとした。
「そうでしょ。我が社のホープです。今後ともよろしく。あっ! 四月から俺の変わりに接待で来ると思いますから、その節は同様によろしく頼みます。おいっ! 君からも頼んどけよ」
「その折りは、よろしくお願いします」
「そぉ~。…じゃあ、満ちゃんは?」
「ご心配なさらなくても寄りますよ。ただ、会社関係は外れることになると思いますが…」
「あらっ、満ちゃん出世するんだっ!」
早希ちゃんが攻撃を開始した。私は防戦に努めた。
「そんな大したこっちゃないさ。だいいち、正式な辞令はまだ出てないんだから…。それはそうと、さっきの話だけど、沼澤さん、最近、来る?」
「ええ、二日ほど前にこられたわよ、ねえママ?」
「正確には三日前の土曜ね」