第125回
だから、どうなんだ? と問われれば、答えに窮する私であった。自分でも、もどかしいのだが、なんか今一、アグレッシブさに欠けるのである。一歩一歩、石橋を叩いて渡る…独り相撲的性格の私だから仕方がない…と云えばそれまでだが、寄り切り、寄り倒し、上手投げ、猫だまし…何でもいいから勝ちたいとは思った。二人の関係に進展がないのには早希ちゃんの性格が幾らか影響しているようでもあった。私が彼女の気を引こうとすると、決まって出鼻をくじかれたから、私の攻めは続かず、その場で絶ち切れとなるケースが多かった。まあ、それはともかく、私達は三十分後、私が住む新眠気の氏神様をお祀りする安楽神社へ詣でていた。何人かの初詣の人が通り過ぎ、私達を見てニタリ顔でお辞儀した。『これはこれは、お二人で…』とか云いたげなニタリ顔に思えるのだが、私としては笑顔の軽いお辞儀で返すしかなかった。これが知り合いなら事情を云い、変な先入観を取り除けるのだが、赤の他人だから仕方がなかった。玉の霊力ではないのだろうが、そう思った矢先、不思議にも進行方向の拝殿前に児島君が立っていた。
「おい! 児島君じゃないか。こんなところで遭おうとは…」
「いやあ、課長…。こちら、誰ですか?」
他人と同じニタリ顔で児島君は私達を見た。
「そ、そんなんじゃないんだ!」
私は噛みながらも、弁解に努めていた。