第124回
そんなことはないだろう、と笑われるかも知れないが、早希ちゃんに下心があった訳ではなく、ただ今までの鬱憤を思い浮かべただけだった。それが、霊力の波、ここでは敢えて霊波と呼ばせてもらうが、私が思ったその霊波が、みかんの酒棚に置かれた水晶玉へと届き、…これも正確には背広ポケットに入れた小玉を中継してなのだが、その玉の判断により霊波で早希ちゃんに電話をかけさせた…という筋に思えた。それは、彼女がタイミングよく私に電話してきたからだが、確信できるとまではいかず、偶然、私の思いが早希ちゃんの電話と重なったんだ…ぐらいに流していた。早希ちゃんはそんなことを私が考えているとは全然、知らぬげで、食べ終えた食器を洗っていた。
「ママがね、満ちゃんによろしく、って云ってたわよ」
「えっ? ママはここへ来たのを知ってんの?」
「もちよっ。だって、あのあと、私、電話したもん…」
そうか…早希ちゃんは私に、そこまでの気はないんだな、と思った。気があれば、ママに電話などせず、ここへ来るはずだからである。それでも、彼女の一挙手一投足を見ていると、そうでもないような、またあるような感じで、今どきの娘なんだ…という気になっていた。どうも玉は、そこまでの霊波を彼女に送っている訳ではなさそうだった。
「どうだい? これから初詣にでも行こうか?」
「そうね…、別にいいけど」
中途半端ながら一応、早希ちゃんはOKした。