第121回
「お分かり戴けたのなら、それで結構でございます。あとは塩山さんのお考え通りに…。玉のお告げがその都度、あなたをお助けすることでしょう」
沼澤氏は云い終わると、座禅をやめて静かに立ち、ズボンの汚れを払った。
「これから、お帰りですか?」
「ええ、お告げがあったもので、いたまでです」
「そうでしたか。いやあ、床に座って何をされているのか、と思いましたよ」
「ははは…、玉との交信を続けておったのです」
「交信されるようなことが他にも?」
「そりゃ、私にだって生活の都合がありますから、あなたが本当にここへ来るのか? と確認させてもらったようなことです」
「なるほど…。で、玉はなんと?」
「必ずあなたは来るから待つように…と。それも小一時間以内に来ると…」
「それで…。遅くしてしまったようで、すいません」
「なあに、あなたが謝る必要はありません。全ては玉の思し召しですから…。それじゃ、帰りますか?」
「あのう…、会館は沼澤さんだけですか?」
「はい。スペアーキーは預かって持っておりますから、閉じて帰るだけで事足ります」
眠気会館には常駐の町職員がいるのだが、どうも特定の利用者だけにはスペアーキーを手渡しているようだった。