第113回
「ほう…、それは、ひとまずですなあ。ところで、話は戻りますが、身に備わったとお云い飲む塩山さんの霊力ですが、自分で働かせるとか調整したりとか出来るんですかな?」
「それなんですよ、禿山さん」
「ほう! …」
禿山さんは話に楽しみにしていました、とばかりに身を乗り出した。
「まだ私の意志でどうこうする霊力はないのですが、沼澤さんを見ていますと、自分も孰れは、ああいう具合に慣れるように思えます」
「新車の運転が少しずつ上手くなる、ってなとこですか?」
「おお、まさにそれです! いい例えだぁ~」
私は禿山さんの例えの妙に感服した。
「しかし、自分の意志で霊力を操れるようになれば、邪心で悪用も出来ますが、その辺りは、どうなんでしょうな?」
「当然、そんな場合は玉がストップをかけます。玉には全ての事象を客観できる万能の霊力が存在するのです。私は、その中からほんの少しの力を預かっているだけです。沼澤さんに戴いたこの水晶小玉ほどの力なのです」
私は沼澤氏からもらった水晶小玉を背広上衣のポケットから出し、禿山さんに見せた。
「この話は、まだ聞いてませんなあ…」
禿山さんは、私の手のひらに乗った水晶小玉をシゲシゲと見ながら、そう云った。
「なんだ、そうでしたか…。これをみかんで戴いたんですが、大玉と交信するのだそうです」
「ほう! …」
禿山さんの身を乗り出して聞く癖が、ふたたび出た。