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第11回
早希ちゃんが作ってくれた昨夜の焼飯もそうだったが、今朝のモーニングもまずまずの美味さで、スクランブル・エッグの味と柔らかさが絶妙だった。コーヒーを啜りながら考えたのは、みかんで話題となった水晶玉の男のことだった。気になり始めると止めどなく気になるのが私の性分で、先延ばしせず結論を求めたくなる。いったい、みかんに現れた男はどういう男なんだろうか。ただの占い師にしては些か妙なところがある。というのも、商売道具の水晶玉をカウンターへ置いた時点で占うのなら話は分かるのだ。って云うか、まあ普通はそれが占いなのである。取り出した水晶玉を使わず、結果を先に告げるというのも解せないし、この次、店へ寄った時に訳を云おう、というのも気を持たせ、人を小馬鹿にした話だ。うさん臭い話はこの世に多々あり、その話に乗る、乗らないは、その人の気持ひとつだが、正直者を欺くような輩は地獄へ落ちればいい…とは常々、私が思っていたところだ。無論、ママや早希ちゃんが話した男がそうだというのではない。第一、私はその年老いた紳士風の男に、一度も会ってはいないのだ。