第104回
「…失礼なことを…。誠に申し訳ありません。それで…、私に霊力が宿るのは、いつ頃なのでしょう?」
「まあ、近々…とだけ申し上げておきましょう。ははは…、私にもそこまでは分からんのですよ。玉のお告げを伝えておるだけですから…」
そんないい加減な…とは思ったが、これ以上、追及せずにおこう、と私は我慢した。
「そうですか…。いや、先ほども云いましたが、漠然とした不安がありましてね。それでお訊きしたのですが…。ところで、それは自覚できるのでしょうか?」
「はい、それは分かります。過去に霊力を授かったという方のお話をしましたよね?」
「ええ…。資産家になられて外国暮らしをされているとかいう方ですか?」
「そうです。その方の場合、急に玉の声が空から聞こえてきたそうです。普段どおり、道を歩いておられた時です」
「空からですか…」
「私の場合も、空からではありませんが、突然、どこからともなく聞こえてきたのですが…」
「それが最初に自覚できることなんですね?」
「はい、…まあ、そうです。その後は、両の瞼を閉じ、玉の姿を思い浮かべれば、自然と玉の声が聞こえるようになったのです」
「沼澤さんの実体験ですね?」
「そのとおりです。私は以降、今に至るまでの間、玉とは、こうして交信しておるのですよ」
「なるほど…、そうなんですか」
私は、そうなんだ…と思え、幾らか心の緊張が、ほぐれた気がした。