第103回
「ああ、お待たせしました…」
「いや、それはよろしいのですが…。伺いをたてましたところ、玉が申すには、あなたの出世は自分が、玉がですな、霊力でそうしたのだそうです」
「えっ! 私が次長に昇格することをですか?」
「はい、そうです。どういう方法を使ったのかを玉に訊ねますと、人の気持をその気にさせるなど容易いことだ、と申しまして…」
「そ、それは、ある意味、素晴らしいことですが、私は少し怖くなってきました」
「ははは…ご心配なく。そのうち、あなたにも玉と交信できる霊力が宿る筈ですから…」
「そ、それも正直なところ怖いんですよ、実は…。私は今のままでいいんですが…」
「なにを弱気なことを云っておられます。塩山さん、あなたは玉によって与えられた霊力で世界の人々を救わねばなりません。それが、あなたに課せられた使命なのだ、と玉が申しております」
「沼澤さん、こんなことを云っちゃ失礼だが、あなたがそう思っておられるだけなんじゃ?」
「いいえ、今、私は玉と霊力で繋がり、交信をしておるのです。この電話を通して、玉の意志を、あなたにお伝えしているだけなのですよ。私には玉の意志が手に取るように分かるのです」