第101回
「はい、沼澤ですが…」
「あっ、沼澤さん? 繋がってよかった。昼前に電話しようと思ったんですが、運悪く、人が来たもので…」
「ああ、そうでしたか。しかし運は悪くないですよ、塩山さん。現に私は昼まで外出しておったのですから…。ほんの十分ほど前に戻ってきたばかりでして…」
「そうだったんですか。じゃあ、やっぱり運がいいのか…。まあ、そんなことはどうでもいいんですが、電話したのは、ですね。さっそく異変らしきことが起こりまして…」
「ほお…、昨日の晩の今日にですか?」
「はい、そうなんですよ。いくらなんでも、昨日お会いして、半日ほどしか経ってませんのに…」
「それで、どのような?」
「実は、私が次長に昇格しそうなんですよ」
「なんだ、そりゃ、おめでたいじゃないですか、しかし、それが異変ですか?」
「…そう云われますと、違うような…」
「私にも異変なのかどうか、玉に伺いをたてるまでは分かりませんが…。折り返し、ご返事を差し上げますので…。ああそれと、私、携帯を持ってませんので、何ぞの場合はこの番号へ願います。それにしても、この番号、よく分かりましたなあ?」
「ママに訊ねたんですよ」
「ああ…、みかんのママさんから、でしたか。それじゃ折り返し。…お仕事中になると思いますが、よろしいですか?」
「えっ? まあ、何とかします」