色々どうでもいいので、何がどうなってもどうでもいいの巻
「散髪をされていたのですか」
片づける間のなかった大量の髪を見て、たむらが言った。
屈んで、ごっそりと手のひらに握る。
「傷んでますね。栄養が足りていないのでは? 」
「結果はどうでしたか」
あまり興味はないがとりあえず聞いた。
「ああ・・・・・・」
髪の毛を握りしめたまま呟いたたむらもあまり興味がなさそうだった。
「102号さんは、隠居型ひきこもりでした」
「へえ」
「とにかく面倒で外に出たくないようです。過去はともかく、現状ひどく差し迫った悩みはありません。一見、悟りを開いたように穏やかですが、何の希望もなく、後は死ぬだけのタイプです」
大変遠慮のない物言いだった。
このテストは繊細なひきこもり仲間の死期を早めるだろう。
私はその大きな可能性を思った。
「傷つきましたか」
たむらがじっと私の目をのぞき込んでくる。
「いえ。かなりいい線だと思いました」
「そう。このように、余り傷つかないのも隠居型の特徴です。色々どうでもいいので、何がどうなったってもうどうでもいいのです」
凄まじいどうでもいいの応酬だった。
「これがわかって、何の役に立つんです」
「ひきこもり別の対処法があります。あなたは、何か愉快だ、と思えることを探さなければいけません」
「愉快だ、と思うことくらいあります」
その後に続く言葉を、たむらは待った。
私も、そのうち何か出てくるだろうと思って待った。
時は過ぎ、夜風が入り込むほどだった。
押し入れの少年は干からびて死んだだろうか。
「……」
……。
「明日から、愉快なことを探しましょう。僕の友人を連れて参ります。彼と話しながら、貴方も考えてみてください」
たむらが私の肩を叩いた。
「ワハハハ」
声を出して笑ってみた。
たむらはそのまま帰っていった。
少年は押し入れの中で、胎児のように眠っている。