食材を持ったたむらが来た
ピンポン。
「はい」
ドアを開けたら荷物を抱えたたむらが立っていた。
「こんにちはようやく開けてくださいましたね」
「……スーパーの袋?」
「ええ。僕がついさっき買ってきました」
たむらは断らずに部屋にあがる。
一直線に冷蔵庫へ向かっててきぱきと食材を補充し始めた。
「宅配便より便利だな」
「でしょう」
そう言って笑いかけたたむらの表情がそのまま固まった。
「いやな匂いがする」
私は稀なことに替えの寝間着に身を包んでそのまま布団に座っている。
たむらはすぐにベランダのサッシが割られていることに気づいた。
真っ白い靴下を汚しながら駆け寄る。
「僕以外に誰か来たのですか?」
たむらは私に背を向けているので表情は見えない。
「まさか」
一笑に伏した。
それと共に股がずきずき痛む。
「しかし」
たむらは遠慮なく部屋を睨めまわす。
何か言いたげだった。私は何を言われるのか待とう、と思った。
「……わかりました。では、僕を自分から招き入れることが出来たので、次のプログラムに移りましょう」
頷きも、否定もせず、黙ってたむらの言うことを聞いた。
「明日、同じ時間に伺います。いつものように待っていてください」
こちらに向けられたたむらの顔は、相変わらず端正だった。そして、仕草も。
たむらは端正に屈み、端正に部屋のはじに転がっていた包丁を拾って、端正に私に手渡した。
「あと、おとしものですよ。102号さん」