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手引き!読まなきゃ!ダメ!絶対!

「読まなかったのですね」

昨日彼が来た時間と同じ針の位置の頃に彼は来た。

「うちの鍵を、どこで手に入れたのですか?」

「あれほど読んで下さいと頼んだのに」

たむらは悲しそうな顔で手引きを拾い上げる。

「では、要約して差し上げましょう」

そしてそれがすべて嘘だったかのように朗々と言葉をつむぐ。

「あなたのところに毎日僕が来ます。あなたが外へ出るまで来ます」

にっこりと笑いもする。

「永遠に」

本当にそんなことを書かれている手引きが役所から発行されるだろうか。

「私、たぶん死ぬまで部屋に居ますよ」

「では、死ぬまで通うと思います」

私はどれくらい生きるだろうか。たむらは私より少し年上に見えるが、彼が死ぬまで生きているとも思えない。それに公務員には転勤も定年もあるから永遠なんて。

私が個人が死ぬまで国に手間を掛けることは変らないが。

「そうですか。がんばってください」

布団に包まる。話はわかったので帰って欲しいという意思表示を行ってみた。

「がんばります。手始めに102号さんの電話線を切りました」

たむらは引き続きにっこりにこにこしている。

「僕が食料も、生活必需品も運んで差し上げます。だから、まず、ご自分でドアを開けて、僕を迎え入れられるようになってください」

国は一体何を考えているのだろう。こんなことなら、手引きをちゃんと読んでおくんだった。


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