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7 穏やかな攻防

 カカポたちの賑やかな羽音、

少し間の抜けた鳴き声ではじまる森の朝。

 リーナは小さな家の壁に造りつけたベッドから出て台所へ。

 すでに床には緑色の丸い影が十個、大きな饅頭みたいにぞろぞろ。

「おはよう、みんな。今日も早いのね」

 リーナが声をかけると、十羽のカカポたちは一斉にモフッと羽を膨らませて「ぐぽ」「ぐぽぐぽー」「ぷぇ!」挨拶をします。

 彼らはリーナの作る料理が大好きすぎて、最近ではお手伝いをしようと躍起になっているのです。

 昨日、リーナが楽しみに取っておいた大きなカボチャは、彼らの「向上心」によって床の上で木っ端微塵。

「あらら……またやってくれたわね」

 リーナは困ったように笑いながら、カボチャの残骸を拾い集めます。

 普通なら溜息をつくような光景ですが、彼女の胸の奥には、不思議と温かい充足感だけが広がっていました。


 リーナの中に宿る、自分でも理由のわからない強い衝動。

 それは、「目の前の小さなものたちのお腹いっぱいにしてあげたい」という、祈りにも似た執着でした。

 かつて生まれるはずだったひとつの命。

 その子が失われるはずだった瞬間に、入れ替わるようにしてこの世界へやってきたリーナ。

 彼女の中に、元の世界の記憶は一欠片も残っていません。

 ただ、魂の深い場所に刻まれている気持ちがあります。

「次は、たくさん食べようね」

「次は、ずっと一緒に笑おうね」

 その「誰か」と交わしたはずの約束が、今は目の前で挽肉を足蹴にして喜んでいる食いしん坊なカカポたちへと向けられているのでした。


 カカポたちが台所の隅で、昨日の挽肉を「こねる(踏み潰す)」作業を勝手に再開しようとしたので、リーナは慌てて彼らを抱き上げました。

「それは私がやるわ。みんなは、お皿を並べるのを手伝って」

 カカポたちは、ずんぐりした体で一生懸命に木のお皿をくわえて運びます。

 たまに自分の足に引っかかって転び、「ぷぇ」と情けない声を上げていますが、リーナがその頭を撫でると、誇らしげに胸を張るのでした。


 今日のご飯は、粉々になったカボチャと挽肉をたっぷり煮込んだ「カカポ特製・黄金シチュー」

 湯気が立ち上る鍋を囲み、十羽と一人が食卓につきます。

 美味しそうに頬張る彼らを見つめながら、リーナは心の中でそっと呟きました。

(ああ、やっぱり。食べてくれる人がいるって、なんて幸せなのかしら)

窓の外ではカカポの森が、優しく彼女たちを包み込んでいました。

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