6 リーナがここにいるのは
カカポの森の奥深く。
小さな家に棲む娘、リーナ。
いつもそばにいる、カカポ。
リーナは、別な場所で生きているとき、身籠っていました。
もうすぐ産まれるというそのとき……
止まらない血液、薄れゆくリーナの意識。
赤子の心音が、消えました。
夫が、父が、母が、医者にすがりついたのですが。
「リーナさんか、赤ん坊か、
どちらかしか助からないかもしれません」
リーナは「子どもを助けて」と言った……
けれどその声は誰にも届かなかったのです。
それでもひっしに伸ばした手が、
小さな手をつかみ、引き寄せてーーーーーー
リーナはいつしかカカポの森に居ました。
影のような姿に黒いマント、大きな銀の鎌を持った人が立っています。
「ここはどこ? わたしの子どもはどこに?」
「困った人間だ。
子どもの命を刈り取る筈だったに、
身代わりにお前さんが来てしまうとは」
「子どもは? どこ?」
「お前の子どもは、家族のもとに。
お前はここで暮らすがよい。
元の世界には帰せない」
カカポの森の小さな家に導かれ、リーナは前の生を忘れてしまいました。
トントントン
まぜまぜ
こねこね
じゅうじゅうじゅう
今日もリーナは美味しいものをいっぱい作ります。
かわいいカカポに、
たくさんたくさんご飯を食べさせる。
大事なものたちに美味しいものを
いっぱい作ってあげたい
その気持ちだけ
リーナは憶えているからです。




