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1 美味しいもの!

春の終わりの、少しだけ風の柔らかい午後。


カカポの森のの小さな家に、リーナは住んでいました。


木の家。

丸い窓。

小さな庭。


そして——


家の中には、カカポがいました。


「おはよう、みんな」


リーナがキッチンの扉を開けると、


もふっ

もふっ

もふっ


緑色の丸いものが、床の上でいくつも動きました。


「ぐぽー?」


「ぐぽーぐぽー」


「ぷふー」


全部、カカポです。


丸くて

ふわふわで

ほんのり草の香りがして


そしてとても、かわいい。


この家には、十羽以上のカカポが住んでいました。


名前もちゃんとあります。


・ポポ

・モス

・タンポポ

・クルミ

・シダ

・マル

・ノロ

・ふわり

・こまめ

・ドン


「今日はなに食べたい?」


リーナがしゃがむと、カカポたちがよちよち近づいてきます。


カカポは飛べません。

だから歩きます。


とても一生懸命に。


とてとて

とてとて

とてとて


ポポが、リーナのスリッパの上に乗りました。


「ぐぽー」


「ポポは甘いものかな?」


「ぐぽー!」


「やっぱり」


カカポは食いしん坊です。


リーナはエプロンをつけました。


今日の朝ごはんは——


かぼちゃとリンゴのふわふわ蒸しパン。


「よし、作ろう」


カカポたちはキッチンに集合します。


なぜなら。


料理が始まると、いい匂いがするからです。



リーナは大きなボウルを出しました。


まずはかぼちゃ。


「はい、これ」


ぽと。


床にかぼちゃを置くと、カカポたちが寄ってきます。


「ぐぽー」


「ぐぽーぐぽー」


ポポとマルが、かぼちゃをくんくん嗅ぎました。


カカポは鼻がいいのです。


リーナは包丁でかぼちゃを切りました。


コトン

コトン

コトン


中は、きれいな濃い黄色。


「きれいだねえ」


クルミが、じっと見ています。


リーナはかぼちゃを蒸しました。


湯気がふわりと上がります。


「ぐぽー……」


カカポたちが、いい匂いにうっとりしています。


「まだだよ、まだ」


次はリンゴ。


シャク。


シャク。


甘い匂いが広がりました。


すると——


ドン。


丸い影がテーブルの横から現れます。


ドンです。


この子は食べ物の匂いを嗅ぎつける天才です。


「ドン、まだよ」


「ぐぽー」


でももう待てません。


ドンはリンゴをじっと見つめています。


リーナは笑いました。


「じゃあ、一口だけね」


小さく切って渡すと、


ぱく。


ドンはゆっくり噛みます。


もぐ

もぐ

もぐ


そして。


「ぐぽーォォォ」


満足の声。


カカポたちがざわめきました。


「ぼくも」


「ぼくも」


「ぼくも」


という顔です。


「順番ね」


リーナは少しずつ配ります。


カカポたちはお行儀よく並びます。


すごく丸い行列です。


もふ

もふ

もふ

もふ


それから、蒸したかぼちゃをつぶして、


小麦粉

牛乳

すりおろしリンゴ

はちみつ


全部まぜます。


まぜまぜ。


まぜまぜ。


すると。


ポス。


何かが背中に当たりました。


振り返ると——


ポポがよじ登っていました。


「ポポ、流しに落っこちるよ」


「ぐぽー」


でも降りません。


なぜなら。


ボウルの中が気になるからです。


リーナはスプーンに少しだけ乗せました。


「味見係ね」


ポポはぺろりと舐めました。


そして。


「ぐぽーォォォォ!!」


翼をばたばた。


大成功です。


「よかった」


リーナは生地をカップに入れました。


蒸し器に並べます。


カカポたちはその周りを囲みました。


じー。


じーーーー。


じーーーーーーー。


「まだだって」


10分。


湯気が上がり続けます。


いい匂い。


甘い匂い。


かぼちゃとリンゴの匂い。


カカポたちは、だんだん座り込みました。


待っているのです。


リーナはふたを開けました。


ふわぁ。


蒸しパンが膨らんでいます。


やわらかくて

黄色くて

ほんのり甘い匂い。


「できた!」


その瞬間。


カカポたちが立ち上がりました。


「ぐぽー!」


「ぐぽー!」


「ぐぽーォ!」


リーナはお皿に並べました。


少し冷ましてから——


「はい、どうぞ」


まずポポ。


ぱく。


ふわ。


ポポの顔がほころびます。


次にマル。


ぱく。


もぐもぐ。


シダは半分食べてから、


ころん


と転がりました。


幸せな時、よく転がるのです。


タンポポは蒸しパンを抱えて食べます。


「ぐぽーぐぽー」


満足そうです。


リーナも一つ食べました。


ふわふわ。


甘い。


「うん、おいしい」


その時。


窓の外から、


ぐぽーォォォォォ


低い声が聞こえました。


カカポたちは一斉に振り向きます。


「お客さんかな?」


リーナが窓を開けると。


そこには——


もう三羽のカカポがいました。


しかも。


とても丸い。


とても大きい。


そして。


とても、お腹を空かせた顔。


「いらっしゃい」


リーナは笑いました。


「ちょうど蒸しパンできたよ」


カカポたちは家の中へ入ってきました。


よちよち。


よちよち。


そして蒸しパンを見た瞬間——


目が輝きました。


今日の台所は、まだまだ忙しくなりそうです。

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