ーーEP5ーー
ーー時刻は12時過ぎ。
海沿いの定食屋。
観光地価格だけど、妙にうまそうな匂いがする店。
三人は迷わず入る。
星兄、ヒレカツ定食。
ケンジ、生姜焼き定食。
三沢、大盛りカレーライス。
そして。
星兄とケンジの前には瓶ビール。
「昼からは効くぞこれ」
星兄がグラスに注ぐ。
黄金色が立ち上がる。
ケンジも注ぐ。
泡が少し多い。
カチン、と軽く鳴らす。
三沢は水。
透明。
氷多め。
二人がグラスを傾ける。
三沢の目線もゆっくり上がる。
グラスの角度と完全同期。
ごくり。
喉が鳴ったのは誰だったか。
星兄はそれを見逃さない。
「……三沢」
何も言わず、自分のヒレカツを一切れ。
ぽん。
そして、ケンジの生姜焼きを箸でひとすくい。
ぽん。
三沢の大盛りカレーの中央に着地。
ケンジ
「あ、俺の生姜焼き!」
三沢
「カツはともかく、生姜焼きは別皿にしましょうよ」
星兄
「お前なら大丈夫」
三沢
「何がですか」
ケンジ
「カレーの懐の広さを信じろ」
三沢
「懐っていうか侵略ですよこれ」
ヒレカツはすぐなじむ。
生姜焼きはやや浮いている。
カレーの海に肉の小島。
三沢は少し迷ってから、まとめてすくう。
「……うま」
星兄
「だろ」
ケンジ
「俺の生姜焼きだからな」
星兄がまたビールを飲む。
三沢の目線、再び上昇。
ケンジ
「角度トレースすな」
三沢
「見てませんよ」
星兄
「顔がビールになってる」
三沢
「どんな顔ですか」
三人、笑う。
店の外は青空。
遠くで子供が走っている。
昼下がり。
胃袋は満ち、気持ちも丸い。
この三人の時間は、
とてもゆるい。
とても平和。
そして、
まだ何も壊れていない。
ーー会計はじゃんけん。
ケンジが一発で負ける。
「今日、流れ悪いわ」
「生姜焼き取られた時点でな」
三沢が静かにうなずく。
店を出る。
さっきまでの青空が、ほんのりくすんでいる。
ぽつ。
三沢の腕に一滴。
ぽつ、ぽつ。
「あれ」
見上げる。
細い雨。
傘を出すほどでもない。
でも確実に降っている。




