表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の見つけ方  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/35

ーーEP30ーー

男性は苦笑する。


「失礼ですが、客足も多くはない。スタッフの人数も抑えているように見えました」


スタッフの一人がわずかに眉をひそめる。

女将は何も言わない。


「夕食が始まった後……一度、厨房へ向かいました」


ケンジが小さく顔を上げる。


「誰もいなかったんです」


三沢の目が細くなる。


「今日なら、出来ると……思ってしまったんです」


その言葉は、静かに床へ落ちる。


女性客のひとりが口元を押さえる。

もう一人は男性から視線を逸らす。


星兄はゆっくりと一歩近づく。


「厨房から、どう動いたんですか?」


問いは短い。

だが、次の答えで全てが決まる。


雨音だけが、一定のリズムで刻み続けている。


男性はゆっくりと言葉を選ぶ。


「厨房に寄り、誰もいないことを確認しました。一度大広間に戻り、皆さんが忙しくされているのを見て……それから、もう一度厨房へ入りました」


「ちょっとわからないです。なんで厨房に?」


女性客が首を傾げる。

場の緊張が、ほんの少し形を変える。


男性は小さく息を吸う。


「私が勤めていた時代に、改装工事があったんです。客室のリフォームもですが……厨房の“下”も」


星兄の視線が、わずかに上がる。


「元々、厨房の下が大広間でした。当時は部屋食が基本で、団体客用の広間だったんです」


女将が静かに頷く。

古い記憶を辿るように。


「部屋食をやめ、バイキング形式に切り替える際、この今の大広間が新設されました」


三沢が小さく「なるほど」と呟く。


「そして当時の厨房には、配膳用のエレベーターが備えてあったんです」


ケンジと相沢が顔を見合わせる。

ようやく線が繋がる音がしたような表情。


男性は続ける。


「下の広間は改装でいくつかの部屋に分けられました。そのうちの一室が、今の保管庫です。配膳エレベーターの出口と繋がっていた部屋でした」


ロビーの空気が、ひやりと冷える。


「しかも改装時、撤去されたのはエレベーター本体だけ。通路と扉はそのまま残された」


星兄の瞳が細くなる。


「厨房側はベニヤ板で覆い、クロス貼り。保管庫側はタンスで隠しただけです」


一瞬、誰も声を出さない。


つまり。


正面から保管庫に入らなくてもいい。


鍵を使わなくてもいい。


上から、厨房から、

見えない縦の通路がある。


雨音が、低く響く。


ケンジがぽつりと呟く。


「……だから厨房だったのか」


告白は、論理を通過して初めて真実になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ