ーーEP27ーー
歓喜。
静かな、しかし決定的な歓喜。
雨音が遠くなる。
21時5分ではない。
20時15分。
女将が刀を確認したのは、ショーが始まる“前”ではない。
大きく、時間がずれている。
つまり。
空白の40分は存在しない。
あるいは――
別の空白が、生まれる。
星兄が紙を折りたたむ。
「さて」
声は、もう完全に戻っている。
鏡の中の数字が、無言で笑っている。
「みなさん、ひとまず一歩進みました。少しこちらへ」
星兄は柱の前へ全員を促す。
雨音が背後で一定のリズムを刻んでいる。
「犯人、わかったんですか?」
女性客のひとりが、期待半分、不安半分で聞く。
「いえ。むしろ振り出しに戻ったかもしれません」
星兄は紙を持ち上げる。
“20:15”
それを鏡に向ける。
「これ、読んでみてください」
鏡の中の数字。
「……21:05」
小さなざわめき。
今度は紙をそのまま皆に向ける。
「あ、20:15だ……」
女性客が呆然と呟く。
星兄がゆっくり頷く。
「女将さんが最後に刀を確認したのは、21時5分ではなく20時15分だった可能性が高い」
空気が一段冷える。
「ショーは21時開始。つまり、およそ45分の空白がある」
女将に視線が集まる。
「女将さん。保管庫を出て、挨拶の準備をして、21時5分。たった5分でそこまでできますか?」
女将は息を呑む。
「あ……私、あの時は慌ただしくて……時間の感覚があっという間で」
後ろにいたスタッフが口を挟む。
「私たちも配膳をしていると、時間はすぐ過ぎます」
三沢が一歩前に出る。
「整理します。20時15分に刀を確認。その後、挨拶の準備や配膳。20時55分頃に最終確認。21時、ショー開始」
全員が静かに聞く。
「こんな流れっすよね、星兄?」
「そう、それ」
言葉少なく答える。
ケンジが腕を組む。
「じゃあさ……刀が消えたのは、ショー直前じゃないってこと?」
星兄は柱に紙を映したまま、静かに言う。
「時間の前提がずれていた。だからショー直前だけじゃない。食事中も含めて、可能性は広がる」
約45分。
与えられていなかったはずの時間。




