真実ーーEP26ーー
ケンジが笑う。
「そんなマジックみたいなこと、マジシャンでもなきゃ無理っしょ」
相沢が胸を張る。
「マジシャンです、私」
「さすがに無理でしょう」
そこで三沢が静かに口を開く。
「星兄。その時計って壁掛けのタイプですか?」
「いや、デジタルで置き型。シンプルなやつだね。時刻以外の表示もない」
三沢は一瞬だけ、柱を見る。
鏡の中の数字。
誰もまだ、気づいていない。
けれど。
鏡に映ったデジタル時計。
雨音が、また強くなる。
星兄の瞳に、鏡の中のデジタル表示が小さく揺れる。
その時。
「おい、三沢。ちょっとこっち」
三沢「はい?」
ケンジ「なになに、オレも行く」
三人が柱の前に集まる。
星兄は、声を落とす。
「これさ……鏡に映ったデジタル時計って、そのまま読めるか?」
ケンジが即答する。
「読めるでしょ?」
三沢は柱を見つめたまま。
「読めますけど、反転してる数字を読まなきゃですね」
星兄の目が細くなる。
「だよな」
彼はフロントへ入り、紙とペンを持って戻ってくる。
しゃがみ込み、床に紙を置く。
“21:05”
7セグメント風に、四角いデジタル文字で書き出す。
それを鏡に向ける。
三人の視線が動く。
鏡に映った数字。
“20:15”
沈黙。
ケンジが小さく息を吸う。
星兄は次に“20:15”と書く。
鏡へ。
映った数字は――
“21:05”
三沢の口元がわずかに上がる。
星兄がゆっくり立ち上がる。
「女将さん、何度もすみません。21時5分で間違いありませんか?」
「はい。間違いなく」
星兄は紙を持ち、柱の前に立つ。
“20:15”と書かれた紙を鏡へ向ける。
「こう見えていましたよね?」
女将は、何の疑いもなく頷く。
「ええ。21時5分と」
その瞬間。
三人は顔を見合わせる。
そして、声を押し殺して笑い出す。




