ーーEP24ーー
穏やかな顔立ち。
ショーの最中はよく笑い、気さくに拍手を送っていた人だ。
「あ、あの……すいません」
声は控えめ。
男性客が、少しだけ勇気を出す。
「実は……私がやったんです」
ケンジ、反射的に振り向く。
「あ、ちょっとごめんなさい、そういうのはいいですから」
「乗っかってボケられるとトリオみたいじゃないですか」
相沢が小さく頷く。
「あと、どうせボケるならもっと大きい声で! 誰も聞こえてないですよ!」
男性客は口を閉じる。
「あ……すみません」
椅子に、ほんの少し沈む。
女性三人組がくすりと笑う。
ケンジは話を戻す。
「とにかく透明説はないです!」
「マジックの世界では常識です!」
「マジックと科学を一緒にしないでください!」
女性三人組から、くすくす笑い。
相沢は止まらない。
「さらにですね、刀は実は折りたたみ式でして」
「待ってください」
ケンジ、片手で制止。
「それもう刀じゃないですよね?」
「コンパクト刀です」
「語感で押し切らないでください!」
ロビーに笑いが広がる。
三沢がぽつり。
「それで、誰が透明にしたんですか?」
相沢、固まる。
「……そこまでは」
ケンジがすかさず。
「はい解散!」
場が一気にほぐれる。
女将も思わず口元を押さえている。
星兄は笑いながらも、目だけは冷静だ。
「相沢さん、発想は嫌いじゃないですよ」
「本当ですか?」
「“最初から無かった”という点は」
その一言で、笑いの余韻が少しだけ形を変える。
冗談の中に、かすかな真実。
ほどいた空気の奥で、推理はまだ静かに続いている。
星兄が、軽く手を打つ。
「えっと、一度整理しましょう」
声色が少しだけ変わる。
「まず、21時5分。女将さんは保管庫で刀の存在を確認している。正確には、帯を取りに鍵を開け、タンスから帯を出す。その時に髪留めも見つけて、ちょっと嬉しくなりながら……刀も確認して退室」
女将は何度も頷く。
「そうです、そうです」
「そのあとロビーに戻り、フロントの時計を見たら21時5分だった」
「えぇ、間違いありません」
星兄は続ける。
「その後、女将さんの挨拶でマジックショーがスタート。ここにいる全員は大広間にいた。夕食が終わり、このロビーで女将さんに声をかけられるまでは。」
三沢が静かに頷く。
「大丈夫です。ですが、ひとつ」




