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星の見つけ方  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


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20/35

ーーEP20ーー

星兄は、ゆっくりと全員を見回す。


「皆さん。あの時間帯、広間から出られた方はいませんか?」


静寂。


「トイレに立った、電話をしに出た、何かを取りに戻った……小さなことでも構いません」


ケンジが首を横に振る。


「俺はずっと最前列。タネ探しで忙しかった」


三沢も。


「自分も同じです。途中退席はしてません」


女性三人組は顔を見合わせる。


「私たちも、誰かが立ったら分かると思います」


男性客も低く言う。


「記憶にありません」


スタッフ全員も同様だった。


出た者はいない。

見逃した者もいない。


ならば。


星兄は小さく息を吐く。


「……確認でした」


承知の上での問い。

だが、確認することで一つの壁が立ち上がる。


この時間帯、この顔ぶれでの犯行は、理屈の上では不可能。


論理が、静かに首を傾げ始める。


では、刀はいつ消えたのか。


そして。


“本当に全員が、広間にいたのか。”


空気がまた、わずかに変わる。


その時、ケンジが立ち上がった。

その目は、どこか舞台の照明を浴びているみたいに光っている。


「今ここにいる人達は、全員大広間にいた。しかも誰一人、部屋から出ていない。なのに刀は消えた」


ゆっくりと、全員を見回す。


「これを可能にできる人が、一人だけいるんです」


ロビーにいる全員の呼吸が揃って止まる。


「犯人はあなただ!」


勢いよく指が伸びる。


その先。


マジシャン、相沢。


「え? わ、私ですか? 私じゃありませんよ!」


相沢は椅子から半ば浮き上がり、両手を胸の前で振る。

さっきまで余裕の笑みを浮かべていた男が、いきなり舞台袖に追いやられた役者の顔になる。


ケンジは止まらない。


「全員が広間にいる状態で刀を消せるとしたら、マジシャンである相沢さん、あなたしかいない!」


一歩踏み出す。


「あなたはマジックを使って刀を消したんじゃありませんか?」


ざわり、と空気が揺れる。


女性三人組のひとりが小声で、


「たしかに……消すの得意そう」


男性ひとり客も腕を組み直す。


相沢は額に汗を浮かべながら言う。


「待ってください。私は確かに“消す”演出はしますが……あれは舞台装置と仕込みがあって成立するものです」


息を整える。


「第一、刀は保管庫にあったのでしょう? 私はそこに入っていません」


女将も小さく頷く。


「ええ。ショーの最中、相沢さんはずっと舞台上でした」


ケンジは食い下がる。


「でも、観客全員が広間にいた。あなたは舞台に立っていた。つまり、唯一“全員の視線を操れた人”じゃないですか」


その言葉で、場の重心が変わる。


視線を操る。


それは、物を動かすよりも恐ろしい力だ。


相沢はゆっくりと首を振る。


「皆さんが見ていたのは、あくまで私の手元です。保管庫の刀まで消せるほど、私は神様ではありません」


静まり返るロビー。


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