ーーEP18ーー
21時5分。
その時間、全員が広間にいた。
つまり――
その場にいる誰にも、
動く余地はなかったはずだ。
ロビーは再び静まり返る。
「えっ? これ絶対不可能じゃん。」
ケンジが半ば笑いながら口にする。
怖さと興奮が、同じ皿に盛られている顔だ。
三沢も続く。
「そうですね。21時5分にはあった。今は21時42分……まぁ45分としても、約40分。その間、広間から誰も出ていないし、お互いそれを確認している」
腕を組み、斜め上を見つめる。
「完全犯罪じゃない? どんなトリックよ?」
ケンジは少し楽しそうだ。
事件をゲーム盤に置いた顔をしている。
星兄は、その間ずっと黙っていた。
指で顎を撫で、ゆっくりと言う。
「外部から……地元の人間が侵入した可能性は?」
なぜか三沢に向けて。
「なんで俺に聞くんすか」
三沢は眉をひそめつつも、すぐに女将とスタッフへ向き直る。
「外の土砂崩れって、本当に今さっきなんですか?」
スタッフが答える。
「連絡が入って道の状況が分かったのは、館内放送を入れた直前です。ただ……実際に崩れたのはもっと前かと思います」
空気が一段、沈む。
三沢は下を向き、ロビーをゆっくり歩き始める。
絨毯の上を、思考が擦れていく。
「……21時5分に刀があるのを確認しているなら、住民が来るのも無理ですね」
その言葉は、希望の扉を一枚閉めた。
すると、女性三人組のひとりが、また口を開く。
「警察呼んだ方が早くないですか?」
もっともだ。
全員が一瞬うなずきかける。
彼女はスマホを取り出し、画面を覗き込む。
そして。
「あ、無理かも」
その声は、今までで一番小さい。
夕方から不安定だった通信。
アンテナ表示は空白。
通話も、データも、沈黙。
外界との糸は、完全に断たれていた。
ロビーにいる全員が、同じ事実を理解する。
山に閉じ込められた。
刀は消えた。
時間はある。
出口は、ない。




