ーーEP17ーー
否定のはずの言葉が、
どこか確かめるようにも聞こえる。
ロビーには時計がない。
けれど、
何かが確実に、進み始めている。
女将の言葉が落ちきる前に、星兄がゆっくりと口を開いた。
「でも……」
視線をやわらかく巡らせる。
「そんなに貴重な物だと知らなくても、盗む可能性はありますよね。保管庫に置いてある時点で、いかにも高そうですし」
場に、わずかなうなずきが生まれる。
確かに、と言いたげな視線。
女将は小さく息を吸った。
「……おっしゃる通りです」
しかし、すぐに首を振る。
「ただ、保管庫には他にも貴金属や現金がございます。それらには一切、手がついておりません」
言葉が静かに沈む。
「事情を知らなければ、刀よりも現金の方を持ち出すのではないでしょうか……」
ロビーの空気が、ひとつ形を変える。
星兄は腕を組み、少し考え、
「それなら……確かにそうですよね」
素直に頷いた。
誰も反論しない。
つまり。
刀だけが、狙われた。
その事実が、
静かに、重く、そこに横たわる。
重たい空気の中、
女性三人組のひとりが、おずおずと手を挙げた。
「あの……すいません」
全員の視線が向く。
「いつから無かったとかって、分かるんですか?」
素朴な問いだった。
けれど、その一言で場に“時間”という軸が生まれる。
女将はゆっくりとうなずく。
「正確とは言えませんが……保管庫で刀を確認したのは、21時5分でした」
息を整え、続ける。
「ちょうどこのロビーのフロントにある時計が目に入ったので、覚えております」
ロビーの奥、フロントの方向へ何人かが視線を向ける。
ケンジが反応した。
「ん? その時間って……マジックショーが終わったくらいじゃないですか? みんな広間にいましたよね?」
三沢が腕を組んだまま頷く。
「そうですよね。ステージの前に集まって、必死にトリック探してましたし」
女性三人組も顔を見合わせる。
「私たち、ずっと前の方にいましたよね」
「うん、写真も撮ってたし」
スタッフのひとりが静かに口を開く。
「私たちも、お料理セットやお皿の片付けで……少なくとも広間を出ることはありませんでした」
その言葉に、さらに重みが増す。




