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星の見つけ方  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


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16/35

ーーEP16ーー

広間から集まってきたスタッフたちは、

ロビーに満ちた空気の重さに足を止めた。


誰も事情を聞いていない。

けれど、ただ事ではないことだけは伝わる。


視線が交差する。

しかし、誰も口を開かない。


先ほどまで皿を運んでいた手が、

今は行き場をなくしている。


ケンジは咳払いをひとつ。


勢いよく提案したはいいものの、

その先の展開は用意していなかったらしい。


腕を組み、何か言おうと口を開きかけて、閉じる。


沈黙が伸びる。


磨かれた床に、重たい空気が沈殿していく。


その中で、星兄がゆっくりと一歩前へ出た。


「女将さん。まずは経緯を詳しく教えてもらえますか?」


落ち着いた声。

場を整えるための声。


「そうそうそう、お願いします!」


ケンジがすぐに乗る。


三沢が横目で見て、小さく言う。


「ケンさん、ちょっと今はストップで」


その一言で、場の揺れがすっと収まる。


女将は小さく頷いた。


そして近くにいたスタッフの一人に目を向ける。


「……皆さんにお茶を。お願いします」


その配慮が、この宿らしい。


湯を沸かす音が、

静まり返ったロビーにやわらかく響く。


女将は姿勢を正し、

全員を見渡した。


「まずは……刀の説明からですかね」


その言葉が、夜の中心に落ちる。


まだ、誰も動かない。

ただ、話が始まろうとしている。


女将は一度、息を整えた。


「当館がお預かりしていた刀は、この下の資料館で展示されていたものです」


ロビーの空気が、わずかに引き締まる。


「この地方を守り続けた武将の刀でして……近年、その価値が再評価されました。専門家の鑑定により、国宝級である可能性が高いと判明しております」


ざわり、と小さな波。


女将は続ける。


「現在、正式な認定に向け、有識者の方々が調査を進めている最中です」


言葉を選ぶように、丁寧に。


「ですが、もし国宝級となれば、現状の資料館の設備では管理基準を満たせません。そのため改装が決まりました」


ロビーの奥で、湯呑みにお茶が注がれる音がする。


「そして改装期間中、資料館を運営している当館が、保管庫にて一時的にお預かりしておりました」


静寂。


誰も茶を口にしない。


女将は、視線をゆっくりと宿泊客へ向ける。


「この旅館に刀があること自体、地元の方くらいしか知り得ません。国宝認定の話も、まだ報道各社には伝わっておりません」


少しだけ、間を置く。


「ですから……この事実を知っている方は、ここにはいらっしゃらないと思っております」


言い切った瞬間、

空気がほんのわずかに揺れる。

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