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星の見つけ方  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


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13/35

ーーEP13ーー

残された三組の宿泊客たちは、それぞれの余韻に浸っていた。


女性三人組は、顔を寄せ合いながら小さく笑っている。


「最後のトランプ、絶対どこかに隠してたよね」


「袖かな?」


「いやいや、あの距離で?」


一人がスマートフォンを取り出し、

テーブルの上のデザートを撮る。

別の一人は湯呑みの縁を指でなぞり、

「もう一杯だけお茶もらおうかな」と立ち上がる。


箸を揃え、紙ナプキンをまとめ、

空いた皿を重ねる仕草はどこか手慣れている。


一方、もう一組の客は

静かに食後の甘味を口に運び、

「さて」と声を合わせて腰を上げる。


会場には、皿の触れ合う音と、

控えめな笑い声が混ざる。


一人旅の男も、

自分の席を整え、椅子を静かに戻す。


誰も急いではいない。


三組だけの夜は、

ゆるやかにほどけていく。


女性三人組が最後に立ち上がり、

「おやすみなさい」と声を交わしながら廊下へ消える。


そのあとを追うように、

会場は静けさに包まれた。


灯りはまだ落ちていない。

料理の香りも残っている。


ただ、人の気配だけが薄れていく。


三組の宿泊客が順に会場を後にし、

笑い声も足音も廊下の奥へ溶けていった。


広間には、食事の名残だけが残る。


大皿の上のわずかな彩り。

湯気の消えかけた鍋。

グラスの底に溶けかけた氷。


スタッフたちがビュッフェ台の片付けを始める。

皿を重ねる音が、今度は控えめなリズムを刻む。


その傍らで、旅のマジシャンも手伝っていた。


トランプの束を整え、

テーブル脇に置かれた小道具を箱へ戻す。

頼まれもしないのに、空いた皿を運ぶ。


「今夜は、いい拍手でしたね」


誰にともなく言う。


スタッフが笑う。


「おかげさまで」


賑わいの余韻が、まだ空気の中に薄く漂っている。


ほんの少し前まで、ここは驚きと笑いで満ちていた。

今は、静かな満足が広がっている。


会場はもうすぐ閉じられる。

けれど夜は、まだ終わらない。


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