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星の見つけ方  作者: SHIRATORI TOSHIHIDE


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10/35

ーーEP10ーー

女将が奥から出てくる。


「申し訳ありません。天候の影響で電波が不安定なようです。停電は今のところありませんが……」


穏やかな声の向こうで、雨は遠慮なく屋根を叩いている。


階段を下りてきた先ほどの男性が、ロビーの窓越しに外を眺める。


「こりゃ、明日は足止めかもしれませんね」


冗談めかした言い方。


「それも旅の醍醐味ってやつですかね」


星兄が応じる。


「ですね」


男は肩をすくめ、売店の棚から地元の菓子を一つ手に取る。


何気ない光景。

誰も特別なことはしていない。


ただ、外だけが荒れていく。


窓の向こう、山の輪郭が闇に溶ける。

雷鳴が近づく。


静けさはもうない。


その代わりに、宿全体が

大きな波の前の船のように、ゆっくりと揺れている気がした。


ロビーの照明が、少しだけ落ち着きを取り戻したころ。


女将がカウンターの前に立ち、柔らかく手を合わせた。


「本日のご宿泊は三組様でございます」


視線が自然と集まる。


「皆さまお揃いでのご夕食になります。ささやかではございますが、食後にちょっとした催しもご用意しておりますので、ぜひお楽しみください」


にこやかな声。

外の嵐とは別世界のような、丁寧な響き。


ケンジが小声で言う。


「三組ってことは……俺らと、さっきの人と、あの三人組?」


星兄が頷く。


ロビーのソファには、先ほど風呂で会った男性が新聞を広げている。

土産物棚の近くでは、女性三人がまだスマホをいじっている。


それだけ。


思ったより、こぢんまりしている。


三沢が淡々と呟く。


「山の上の一軒宿ですから。温泉街とは違います」


確かに、ここはネオンも射的屋もない。

あるのは山と雨と、この建物だけ。


一人客の男は新聞を畳み、静かに会釈する。

女性三人は「催しって何だろう」と笑っている。


特別なことはない。

ただ七人が、同じ屋根の下にいるだけ。


廊下は、外の雷に合わせてわずかに明滅する。

停電まではいかないが、電圧が不安定なのかもしれない。


部屋に入ると、雨音がさらに近い。


ケンジが畳に転がる。

「連休でこれなら、穴場だな」


「だから取れたんだろ」

そう言って星兄が笑う。

「でも七人って、妙に少数精鋭だよな」



三沢が窓の外を見やる。


「こういう宿は、人数より滞在時間を楽しむ場所です」


ケンジ「なんだそれ」


三沢「静けさとか」


その言葉に、また雷が重なる。


廊下を、誰かが通る足音。


七人。


嵐が強まるほど、その数はくっきりする。


大きすぎず、少なすぎず。


物語が起きるには、ちょうどいい人数だった。

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