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ヒロインらしきものは去ったけどもうちょっとだけ続きます!  作者: 馬面
第2ゲーム:クロスラリー

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第17話 炎上の裏側

 新聞部の部室は蒼月会館と呼ばれている、校舎よりも小さい建造物の中にある。


 蒼月会館は卒業生などの方々による寄付金によって管理・運営されている施設。一階には食堂と文化部の部室、二階には合宿用の部屋があるらしい……けど運動部の俺には今まで縁がなかった建物だ。


 校舎よりも明らかに新しいし、エントランスはちょっと高級感があって別世界って印象。なんか新鮮だ。


 新聞部の部室は、そのエントランスから少し歩いた先にあった。文芸部の部室も多分近くにあるだろう。


 そこで明莉……来会は部長と二人きりでラブラブな時間を過ごしているのか。元カノって訳でもないのに複雑な気持ちになるな……


「失礼しまーす。倉知さんはいらっしゃいますかー?」


 柔和な姫廻の挨拶が、広い室内に響き渡る――――ことなく喧騒に飲み込まれていく。


 何しろ新聞部は蒼月高校の文化部の中ではダントツの部員数を誇る大所帯。部室内の活気が凄い。


「姫廻さん! 一体どうされました?」


 声が伝わったとは思えなかったけど、どうやら知り合いの倉知さんには聞こえたらしくパタパタと駆け寄ってくる。


 姫廻は俺より一〇センチくらい低いけど、その姫廻よりも更に一〇センチくらい低い。ただ顔は童顔じゃなく尖った曲歌ってるミュージシャンみたいなクールさとオシャレ感。でも愛嬌があって物腰も柔らかそう。


「やーね、ほら例の篠原匠君がさ、ちょーっとお話したいって言うんで連れて来ちゃった☆」


「あ……」


 俺の顔を見てもわかっていなかったみたいだけど、名前でようやく理解したらしい。露骨に顔が引きつってますよ。


「あー……あははははははは! えーと篠原……君? 用件はどんな感じかなー?」


「ちょっくら殴り込みに」


「……ですよねー」


 倉知さんから笑顔が消える。勿論、俺も冗談で言った訳じゃない。


 あんな記事を本人未承諾で全校生徒に晒した連中相手に愛想笑いなんてできるか。


「姫廻さん? こういう時は事前に連絡とか欲しいよねー」


「あ、ごめーん。突然押しかけた方が面白いかなって」


 姫廻は姫廻で新聞部のノンデリな行動には思うところがあったようで、中々な態度。そういや倉知さんのことを俺に話した時『仲が良い子』じゃなくて『知り合い』つってたっけ。


「そ、それじゃ一先ず奧に行こっか。ここだとうるさいでしょ?」


「ですね。あと責任者というか、あの記事を書いた御本人を呼んできて頂ければ」


「……私です」


 こいつは話が早くていいや。早速事情を説明して貰おう。





 ってな訳で、部室の奧には応接室があった。取材用らしい。


「申し訳ございませんでしたーっ!」 


 そして部屋に入った瞬間、倉知さんはジャンピング土下座対応をしてきた。


 なんか着地がこなれてるな。普段からやってんのか?


「なんであんな記事出したの? 倉知さん、中学の頃ってちゃんとした活動してたよね?」


「それには深い訳がありまして……」 


 土下座をやめて徐にテーブルへとついた倉知さんは、対面の俺たちに切々と事情を語り出した。


 蒼月高校の新聞部は県内でも有数の規模と実績を誇り、校内でも抜群の存在感を発揮している。


 ただし決して順風満帆な道のりじゃなかった。


 四年前、当時の部員が評判の悪い男性教諭に一泡吹かせたいとの思いから、弱みを握る為に尾行を実施。するとその教師が特定の家を執拗に撮影している現場に出くわした。翌日も同じ行動をとっていた為、その一部始終をスマホで撮影し記事にした結果、その教師には一ヶ月の停職という処分が下された。


 当初、該当教師は『その家で飼われていた犬が余りに可愛くて、撮影したい欲求を抑えきれなかった』と主張。でもその後、撮影した画像を毎日Xに投稿していたことが判明した。


『可愛い動物の動画を投稿したら沢山のいいねが貰えると思って軽い気持ちでやった。学校では生徒たちから嫌われていて、自分の存在意義がわからなくなっていた』などと供述したという。


 当然良くない行動ではあったものの同情もしくは共感した生徒も意外と多かったらしく、一部の生徒が『特定の人物を陥れる為に尾行するなんて部活動としてどうなのか』と新聞部を非難。これも当然の指摘で、新聞部は厳重注意を受け部費も大幅に減らされた。


 その影響で一時は廃部の危機に瀕したが、翌年高校に着任し顧問となった教師が熱血な御方で、かなり気合いを入れて新聞部再生に着手。県の新聞コンクールで準優秀賞を受賞するなど確かな実績を残し、部員の数も四年前を上回るまでになったという。


「以来、新聞部は健全な活動を心掛けていたのですが……真面目な記事って露骨に受けが悪いそうなんです。宇宙センターのインタビュー記事とか、すっごく取材に時間かけて良い内容にできたのに誰も読んでくれないと先輩がむせび泣いてて……」


「だからまたゴシップに手を出しちゃった?」


「だって暴露系のアカウントもその手の記事が絶対インプレ多いじゃないですか! どんなに実績あっても、ちゃんとした活動しても注目して貰えなくちゃ意味ないんです!」


 涙ながらに訴えかけられても知らねーよ。そんなので俺や月坂先輩を晒し者にして良い理由になるか。


「先輩が言うには、こういう校内のゴシップを定期的にあげるだけで他の記事の注目度も段違いなんだそうです。だから……私みたいな新入りのぺーぺーが修行と称して汚れ役をやらされて……私だって興味ない男子の恋愛事情なんて書きたくないんです!」


「言い方! っていうか生き方!」


「す、すみません。興奮してしまって……篠原君と月坂先輩には本当に申し訳ないって思ってます」


 再び深々と頭を下げられたけど心から反省しているとは思えない。所詮は彼女も命令に従っただけの下っ端だからな。実行犯であっても諸悪の根源には程遠い。


 なんだかな……炎上の裏側を見せられた気分だ。結局、こういうのって『仕方なくやった』フィルターを幾重にも用意して悪意と罪悪感を薄めて薄めて世に出していくんだろな。


「……まあ、俺が聞きたいのは謝罪の言葉より情報の出所なんですけど。尾行とかしてました?」


「滅相もございません! さっき話した通り、尾行で一度廃部しそうになってますから、それはしないよう念押しされてます」


「だったら誰かに聞いたってこと? 先輩と練習した時、周りには誰もいなかった筈だけど」


「すみません。情報源は一切口外できないんです。新聞部ってそういうトコなんです」


 まあ、そうなんだろうなとは思ってたけど。


 結局どうしてあの月坂先輩の発言が漏洩したのかはわからず仕舞いか。まさか盗聴とかされてないよな……?


「月坂先輩が誰かに話したんじゃない?」


「そん……」


 姫廻に反射的に返そうとした言葉が喉元で詰まる。


 あり得ないこともないのか……? 天和にLINEで特に他意もなく伝えてそうな気もしないでもない。


 なら天和に聞いて……いや、もし違ってた時のダメージが深すぎる。かといって先輩本人になんて絶対聞けない。まだ全然そんな関係性じゃない。


「とにかく、情報源を言えないのならせめて訂正の記事を出して下さい。このままだと俺はまだしも月坂先輩に迷惑かかりますから」


「え、あざと」


「何処がだよ普通だろ!」


 最終的に姫廻にジト目で引かれる形で殴り込みは終わった。







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