第00話 記録的な一日
俺には幼なじみがいる。
親同士の仲が良くて、小学生になる前から一緒に遊んでいた。
その頃から大人しい子だった。本を読むのが好きで、いつも部屋で静かに過ごしていた。
ほんの気まぐれで、誕生日に恋愛小説をプレゼントした。当時流行って映画化もされていたようなメジャーな一冊だった。
喜んでいたのかどうかはわからないけど、それ以降彼女の部屋の本棚には沢山の恋愛小説が並ぶことになった。
あれから5年。
「私、部長と付き合うことになった」
高校で初めてのゴールデンウィークも近付いてきた4月21日、午前7時45分。
幼なじみの来会明莉は登校中、何の前触れもなく俺にそんな報告をしてきた。
そして一緒に学校に行くのはもう無理と言われた。
ところで、俺には女友達がいる。
中学2年の時に転校してきて、たまたま隣の席になった女子だ。
気さくな性格で誰にでも明るく接し、すぐクラスの人気者になった。けどそれを面白く思わない一部の女子に教科書を隠された彼女は、家に忘れたことにして俺に見せて欲しいと頼んできた。
それ以来、何かと行動を共にする機会が増えた。特に文化祭での合唱コンクールは、歌が苦手だと嘆いていた彼女と何度もカラオケに通い、練習に付き合った。
あれから1年半。
「実は前から気になってる人がいてさー。どうすれば良い感じになれるか相談に乗って欲しいんだよね」
同日、午後0時40分。
友達の姫廻小遥は、あんバターチョコメロンパンを頬ばりながら何の前触れもなく俺にそんなことを懇願してきた。
断った。
それはさておき、俺には生意気な後輩がいる。
中学時代のソフトテニス部のマネージャーで、俺のプレーに何かとケチを付けてくるから毎日のように口論になった。
それでも最後の夏、団体戦で全国まであと一歩で及ばなかった時には一緒に声をあげて泣いた。そして高校で今度こそ全国に行こうと約束した。
『先輩には内緒にしていましたけど、あの日の翌日に親が離婚して今年の3月から北海道の釧路にいるんです』
同日、午後4時42分。
何の前触れもなくその後輩、天和一茉里からキツめのLINEが来た。
ここは埼玉。直線距離にして1360km。
当たり前だけどウチの高校を受ける予定はないらしい。
それ以前に、引っ越しなんていう重要な話を1ヶ月以上黙ったまま放置されていた時点で近しい存在って認識もないんだろう。
今後会うこともなさそうだ。
それはそれとして、俺には想像上の妹がいる。
一つ下で今は中学3年生という設定。俺の言うことをなんでも素直に受け入れてくれてる全肯定妹だ。
幼少期に身体が弱く何度も入退院を繰り返していた際に枕元に現れ、退屈を紛らわせてくれたイマジナリーな存在。成長して身体を壊さなくなってからも度々出現して脳内で話し相手になってくれていた。
「ごめんねお兄ちゃん。もう一人で大丈夫だよね? 風邪引かないよう注意してよ? 私がいなくても……元気で生きて……――――」
同日、午後11時59分。
何の前触れもなく妹、篠原夢芽は跡形もなく消えてしまった。
もう二度と、幼くも凛としたあの声を聞くことはない。
こうして、たった一日の間に俺の生活から4人もの女子が去って行った。
短編以外ではラブコメ初挑戦です。温かい目で見守って頂けると幸甚に存じます。




