7:この幼馴染、何か変
《sideプラウン》
最近、俺の幼馴染が変だ。
笑顔に少しだけいつものような飾り気が減り、昔のような純粋な本心によるものに見える。変だ。
授業への向き合い方が今まで以上に真剣だ。ハチョーほどではなくても、聖女様と同じくらいの順位にはなるかもしれない。変だ。
そして何よりも変なのは、その隣にいる人間。
数日前まで幼馴染は、プロゲルはそこにいてほしいのは聖女様だとこっそり俺たちに教えてくれていたのに、
「なんでカトラテ嬢と仲良くなられているんでしょうね?」
「分からん。不思議だ。もしや、脅されたりしているのか?」
「しかし、それにしては笑顔が自然では?いやいややっているという風にも見えませんよ」
「では、洗脳か何かという事か?」
あんなに嫌っていたはずのカトラテと、今は笑顔で並んでいる。
これをおかしいと感じないわけがないだろう。
よりにもよって相手はあのカトラテだぞ?恋仲になったなんて受け入れられるか!
今までどれだけプロゲルから不満を、そして周囲からあのカトラテの悪い話を聞いてきたと思っているんだ。
どう考えてもこうなるのはおかしいだろ!
普段はそりが合わないハチョーとも、癪ではあるがプロゲルのため協力することにした。
まずはプロゲルを呼び出して、困りごとはないか尋ねてみる。
だが、それにあいつは首を横に振って、
「何も悪いことは起きていないよ。少し私が、自分のあり方を見つめ直しただけさ」
「自分のあり方ぁ?」
「なんですか、そのいかにも怪しそうな単語は。おそらく、その次辺りに出てくるのは本当の自分とかそんなものですよね?」
「いやいやいや、そういう話ではないってば。単純に、自分が今まで見落としていた悪い部分を治しただけだから」
プロゲルは悪いことだとは認めない。強く否定してくる。
それどころか、
「2人も、1回でいいから婚約者の子と本音を言える環境で話をしてみたら?問題にならない程度の本音をぶつけ合ってみたら、意外と思ってた子とは違うっていう印象になるかもしれないし」
「はぁ?なんでそんなことを?」
「必要性を感じませんが」
「でも、2人ともちゃんと相手を知ってみようと思って話をしたことはないでしょ?諦めるのは一度向き合ってからでいいじゃないか」
それはそうかもしれない。
とは思うが、そんなうまくいくはずもない。
俺とはハチョーはプロゲルからの話だから一応は素直に受け止めて試してみるけど、特に期待なんてしていない。
なんて思った自分を数日後には殴りたくなっていた。
《side加藤独》
「聖女様にはご助力いただき誠に感謝いたしますわ。もしよろしければ何かお礼をさせていただきたいのですが」
王子とカトラテちゃんの距離が縮まったと思ったら、最近は他の男子も少し婚約者とあったりする機会が増え始めた。
どうやら王子やその影響を受けたこと達に感化されたみたい。
周囲の男子が誰かとくっつくこと自体は何ら問題ないんだけど、周りがリア充ばかりになることは少し妬ましい。
けど、私にとってみればそうして作られた関係性によって新しい物も得ることができた。
それこそが、
「特に私は大したことはしておりませんのでお気になさらずとも結構なのですが…………もしよければ、私とお友達になって頂けませんか?」
「お友達、ですか?もちろん構いませんわ」
友達。
男子の婚約者と友好関係を築くことができた。
今回カトラテちゃんを含めた婚約者の子たちがそろてやってきて今回のお礼をなんて言いだしたからお友達になれないか打診してみたんだけど、全員から了承を得ることに成功。
こうして私は、一気に女の子のお友達の数を倍以上に増やすことを達成した。
「しかし、そんなことで良かったんですの?聖女様ならお友達くらい幾らでも作れそうですけど」
「それならよかったんですけど、なぜか私のに声をかけて下さるのは殿方ばかりで…………課外活動で同じグループになったなかには女の子もいましたけど、それはそれでどなたかと私をくっつけようという動きが頻繁にみられたため気を抜けなくて。それこそ一緒にお出かけなどしようものならいつの間にか殿方とのデートにでも変わってしまっていそうで」
「あぁ。なるほど………」
「言われてみれば、聖女様のお近く女子生徒が近づくところをあまり見たことがなかったですね」
「思っていたより、大変だったのですわね」
不思議そうにする婚約者の子たちに私が現状を訴えてみれば、ものすごくかわいそうなものを見る目を向けられてしまった。
でも、これで一緒にできるお友達を確保できた。
それでいい。
軽く課外活動で一緒になった子たちの気になった部分も口にして余計なことに利用したり誘導したりするのは私が嫌がるという事は伝えられたと思うから、しばらくは変なこともされないはず。
もし政治利用しようみたいな動きがあるのなら、しばらくその子との外出は控えさせてもらうくらいにすれば私の求める形にかなり近づくはず!
「周りの人には化粧品などが売ってるお店のことなども分かりそうな人がいなくて」
「確かに…………どこにもいなさそうですね」
「あの。実をいうと私もそういったお店に入ったことがないのです」
「私も御用商人から買い付けておりますのであまりそういったお店にはなじみがなく」
「え?そういうものなんですか?では、私の前提が間違っていたのかもしれませんね。やっぱりこういうことも話せる相手がいないと分からないもので」
思ったより自分で足を運んで買い物をするという子が少なくて驚きはしたけど、言われてみれば貴族ってそういうものかもしれない。改めて私の常識とのギャップを理解できたよ。
そしてそんな風にお友達になってから1月ほど時間も経過することには、かなり仲も深まっていった。
やはり最初の頃には私を利用しようという動きを見せる子もいたけど、そういう子は分かりやすく避けておくことで私の意図は伝えたから、そういったことは私にわかる範囲ではなくなり全員と私の望む形のお友達として過ごせている。
さすがに私もそこまで仲良くなれば口調も聖女らしいものから素の物にさせてもらって、
「うぅぅ。皆相手がいて羨ましい」
「うふふっ。ヒトのお陰ですわよ?」
「口調に加えて発言も完全に聖女のものではないわね」
「ヒト様は好みが独特ですからね。求めるような特徴に合致する方がこの世界にいるかどうか」
聖女らしさが微塵もないという事で呆れられたりはしつつも、皆慣れた様子で笑い私の悩みを一緒になって考えてくれる。
こうして仲良くなったことで余計に私はのろけなどの話を聞くことで相手がいる人間をうらやむ気持ちが強くなり、不満を口にすることが多くなってしまっている。
いつもならこのまま、私の好みを変えないことにはこの世界で相手を見つけることは無理なのでは?みたいな結論にされそうになって私が希望を捨てられずにうやむやにしたりするんだけど、今日はいつもとは違って、
「え?聖女様?」
「幻聴が聞こえたような気がするな」
「待ってくれ。現実を受け入れられない」
「オホホッ。私たちも慣れるまでには時間がかかりましたわ」
「ヒトは素と普段の様子があまりにも違うからね。そうなるのも仕方ない」
本日の集まりにはイケメンたちも一緒。
婚約者を見せびらかすという私への嫌がらせみたいな状況となっていて、だからこそ私の不満もいつも以上に大きくなってしまっているというわけ。
お友達たちと違って王子を含むイケメンたちは私の聖女モード以外見たことがないからあ然としている。
普段いかにも清楚で慈愛に満ち溢れたような笑みを浮かべていた人間が、不満そうな顔で砕けた口調を使って恋人関係をねたむとか考えられないもんね。
「驚かせてしまい申し訳ありません。しかし、殿方の皆様にはいつも通りの対応を致しますのでお気になさらず」
「…………なんというか、仲良くなれたと感じていたのはこちら側だけだったんだろうね」
「かもしれませんね」
「俺たち、滅茶苦茶勘違いしてたってことか?」
「そうですわね。ヒトはかなり気を使って対応をされていたらしいですわよ」
「殿方と1対1にならないようにしつつ、必要な時以外一定以上距離を開けるようにしていたとか」
「…………全く気付かなかった」
「もう一度人の感情を読み取る訓練を基本からやり直さないと」
私が一切素を見せていなかったという事で、自分たちは仲良くなったと勘違いしていたのかとことごとくイケメンたちが落ち込みだす。
それをお友達と一緒に笑ってみつつ、こっちの世界に来てから1番充実しているかもしれない異世界での日々を過ごし始めていた。
補足:ヒトは主人公の名前になります




