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6:全力で抵抗しますよ

話を聞いていただけだけど、思っていたよりも高感度が上昇してしまった。

これは絶対にどうにかして解決したい問題。

まずは牽制と言うわけではないけどあえて席を引いて距離を取るようにしつつ、姿勢を正して気を許していないように見えるようにし、


「今までお話を聞いてきましたが、今1番解決できるかもしれない大きな問題はお話になられていませんね?」


「は?…………え?それは、どういうこと?」


「婚約者との不仲」

「っ!?」


王子の目が驚愕により大きく開く。

ただその中に、小さいながらも希望や期待と言った気持ちがのぞいていることも私は察する。

私が婚約者の対抗候補として出てきてくれるのではないかと言ったような、そんな期待が。

でも、違う。

私は全く近づくつもりはなく、逆に、


「あなたは婚約者の方にどのような印象をお持ちですか?」


「それは…………ここだけの話にしてほしいけど、正直上に立つ者としての資格はないと思っている。傲慢で、自分勝手で、周囲に目を向けられない。良くないことばかりをする相手だと思っているよ」


「なるほど。それはあなたが見て判断したものですか?それとも、ただ人から伝え聞いた話でそう判断したのですか?」


「そ、それは…………」


私の言葉にひるんだ様子を見せる王子。

私の口調にすこし棘があることだけでなく、私がもっと優しい言葉を投げかけることを期待していたからこそそのギャップで衝撃が強くなっているんだと思う。

でも、それでいい。

本当はここまで踏み込んだことを口にするのはもっと安全が確保できてからが良かったけど、こうして好感度があまりにも簡単に上がることから時間をかけ過ぎることは私にとって良い事ではないと判断。

だから、ここで確実に決める。


「確かに、悪事を働いていることを直接見たわけではない。しかし、そのような話を多くの人が言っているんだ!」


「将来あなたが王となるのかは分かりませんが、王子なのですからそれなりに人の上に立つ存在となるのでしょう。では、そのような人が多くの人が言っているからと理由でそれが真実であると判断するのですか?多くの人が言うだけでそれが真実だとしてしまって、本当に国のためになるのですか?」


「え?あ、その…………」


「私は婚約者の方が良い人だと言いたいわけではありません。特に長く話したこともありませんので、そんなことが判断できる程よく知りません。しかし、婚約者の方があなたに見てもらえていないという事は分かります。今まで過ごす中で婚約者の方に配慮されるような動きはあまり見られませんでしたし、会いに行くような話も聞いていません。さらに言えば、そもそも今までもあまり知ろうともかかわろうともしていない」


「い、いや、しかし、それはその…………」


「お相手の好きなものを知っていますか?趣味は?選択している授業は?一度話してみるべきでは?相手の方も立場があるでしょうから、公の場で話をしても十分に本質を見ることは難しいでしょう。ですからプライベートの場で、今私にされたように少し弱みを見せてみるというのも悪い事ではないと思います。それを相手が受け入れるにせよ攻撃の材料にするにせよ、あなたが直接見て判断できる材料になるのですから」


王子にはあまり言葉を口にさせない。

口にすると自分の言ったことに責任というものがかかって、自分が間違っているとは認めづらくなっていってしまうから。

だから何も言わせずに畳みかける。


おらっ!王子!婚約者を見ろ!私にばかりかまってんじゃねぇ!!!

カトラテちゃんがかわいそうでしょうが!!


「…………そうだね。君がそういうのなら、そうしてみるよ」


少し困ったような顔の王子。

だけど、長く沈黙し考えた末に私の言葉を受け入れた。

これで心のつっかえがとれたね。どういう展開にこれから転がっていくにせよ、一方的に私が悪いという事にはならないはず。

王子も婚約者に事を見るようにと言ったわけだし、配慮をしたという形跡は残せるわけだからね。物語上で「ざまぁ」されるような完全な悪ではない。


最悪敵対するにしても、痛み分けの和解ルートくらいで済ませてもらえるんじゃないかな?

カトラテちゃん、その辺のご慈悲のほどよろしく頼むよ!!


「こんな時間に付き合ってもらって悪かったね」


「いえ。お気になさらず。それよりも、婚約者の方のところに行ってみてください。まだ時間はありますから」


「そう、だね」


まだ完全に覚悟が決まったわけではないようだけど、王子は私に背中を向けて去っていく。

本音を言えばこのまま透明化して後をつけたいところだけど、さすがにそれは野暮ってものかな?

失敗した時のために対策を考えておくくらいにしておこう。


部屋に戻るとまだ女の子も戻って来ておらず、1人ぼっちに。

こうやって旅行に来ても1人になるなんて、聖女っていうのも面倒な役職だよね。ある程度1人でいることには慣れてきていたけど、旅行でもそうなのかと思うとちょっとショック。

ただ、さすがに就寝時間までずっとそれと言うわけではなく、


「殿下とのお話は終わったんですか?」


「ええ。今はおそらく婚約者の方のところでお話をされているのではないかと」


「婚約者の方?」

「どういうことですか?」


私が本来ならそんなことをするときではないはずなのに授業の予習を完ぺきにこなし終えたところで2人は戻ってきた。

ある程度は王子から聞いたのかは分からないけど、情報を得ている様子。

ただ、カトラテちゃんのところに行っているというのは知らなかったみたいだね。

私と話し終えた後の情報は出回ってないってことなのかな?

王子があのまま誰にも連絡せずにカトラテちゃんに会いに行ったからなのか、それともこの2人はそうした情報を優先して伝えられるほど立場が上ではないのか。


「私にしていただいたお話は少し私が聞くには問題のありそうなことでしたので、婚約者の方に一度お話してみることをおすすめしたのです。話の内容は個人的なものでしたので控えさせていただきますが、相談者として私は適任ではないようなお話でしたね」


「そうなんですか?」

「しかし婚約者の方なら問題ない話、ということですか」


2人とも困惑した表情を見せる。

2人が予想していた話の事を考えると、私に話してはマズくて婚約者なら話しても大丈夫なんて想像もつかないよね。

でも、私も間違ったことは言ってない。

王子の口から出てきた弱音の中には国の内情に関わるものもあったし、私が聞くのはマズいんじゃないかと言うものもいくつかあったの。そうしたことを考えれば、家の格もそれなりに高いカトラテちゃんの方が情報も持っているだろうし聞き役としては適任なはず。


もちろん家の派閥とかそういう要素が絡んでくるだろうからすべてを話すという事は難しいだろうけど、共感をするとかならカトラテちゃんの方が簡単にできるんじゃないかな?


「それで、お二人は何をされていたのですか?もしかして、婚約者の方と何かされていたりとか?」


「あっ、分かりますか?」

「実はぁ…………えへへ」


2人とも少し照れくさそうな表情を見せつつも、私の言葉にうなずく。

どうやら2人とも婚約者と楽しく過ごしていたようで、そんなことをしていたとなると文句も言えない。1人寂しく残されていたとしても、文句を言うことはできないんだよ!

他人の幸せを妬み起こるなんて聖女としてやったらまずいんだから。


そのまま2人ののろけ話を聞きつつ、私たちは就寝の準備をして明日に備える。

もちろん私の場合は王子関連でトラブルが起きた時の対応策を色々と考えていて、


「聖女様、昨日は相談に乗って頂きありがとうございました。改めましてこちら、私の婚約者であるカトラテです」

「お久しぶりです聖女様。以前は名乗ることもせず申し訳ありませんでした。私、カトラテと申します。お気使いいただきありがとうございました」


「いえいえ。お2人が仲を深めることができたようで何よりです。私も婚約者同士の時間を奪っていたようで心苦しかったので、何かできたならばうれしく思います」


翌朝。

コーヒーがあいそうなほど甘い雰囲気を出す王子とカトラテちゃんが私を待っていた。

警戒すしていたようなことにならずに済んでよかったとは思うけど、ここまでになるのはさすがに予想外だったなぁ。一晩で変わりすぎじゃない?

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