5:夜中に2人で
Q:乙女ゲームっぽい世界なのに攻略したらダメとなった場合、主人公ポジっぽい私はどうなりますか?
A:ガリ勉になります
はい。
という事で私、ガリ勉をやらせてもらってます。
やることが部活や委員会の活動をするか勉強をするかの2択しかないから仕方のない事だよね。
贅沢三昧するとかは聖女っぽくないと言われるかもしれないからできないし、遊びに行こうにも友達がいないし。
おかげで前回の学園のテストでは上位5位以内に入ってしまったよ。
ぎりぎりハチョーには負けたけど、今までなじみのなかった分野の勉強が大半だった割には頑張った方だともう。というか、頑張りすぎだと思う。一瞬、もしや私って天才なのでは?とか思ったくらいだから。
「聖女様の補助魔法はすさまじいですね!我々騎士団にお声がけいただいたときには何事かと思いましたが、ここまで動きが変わるようになるとは」
「ふふふっ。お喜びいただけて嬉しいです。補助魔法はあまり使う機会がなかったので、ご協力いただけてこちらとしてもありがたいです」
最近は習得する魔法も数が増えて幅も広がり、補助魔法と言う分類の人を強化するような魔法も使えるようになってきた。
この間自分で使った時には、素手でリンゴのような果物を粉砕できてしまったからちょっとだけ楽しかったよ。もちろん淑女としてはあまりうれしくない能力だから自分での使用は原則封印することで決定したけど。
現在はそんな補助魔法をもっとより理解しようと、騎士団の人に頼んで魔物とかいう害獣の強化版みたいな存在を狩るお手伝いに参加させてもらってる。
そこで騎士の人達を強化することで、どれくらい効果が出るのかと言うのを見させてもらってるわけだね。
あんまり強化しすぎると逆に普段との差が大きくなりすぎて肉体を損傷したり制御し出来なくなったりする恐れもあるから、そういうところも騎士団の人に意見をもらいつつ調節していく。かなり騎士団の人達にもいい印象を持ってもらえて、またいつでも参加して良いと言われてしまった。
このままいけば、本当に清廉潔白で清楚なみんなのために働く聖女様としてやっていけそう!
「…………ということで、来週課外活動を行いますので皆さんは2晩過ごせるように準備をシッカリとしておいてくださいね」
「聖女様。課外活動は同じグループになりませんか?」
「ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「俺たちで組もうぜ!」
やっていけそうだと思ったらこれだよ。
課外活動。しかも、お泊りもセット。
それに王子たちと参加することになりそうなんだけど!拒否するのもまずいからどうにかできないか考えて、
「お泊りですから、できれば1人は女の子も同じグループに欲しいのですがあてはありますか?…………あっ、そういえばお三方とも婚約者がいるとか?」
「あ、あぁ~。そうだね」
「あいつも仲のいい友達とかいるからな。無理矢理引っ張ってくるのも気が引けるし」
「こちらで声をかけてみますね」
婚約者である子たちに声をかけないかと問いかけてみたところ、微妙な顔をされた。こんな大事な部分でもかかわる気がないってことなんだね。聞き耳を立てた限り基本的には婚約者と共に行動するという人が多そうなんだけど。
でも、拒否されたからと言って私のした提案は悪い物ではないと思う。
王子たちにも私が婚約者がいるという事を意識していることは伝わったはずだし、だからこそ距離を置こうとしているとも理解してくれたはず。
無理に距離を詰められることもないんじゃないかな?
「こっちに来てから女の子とお話が出来る機会が少なかったので嬉しいです。楽しみにしていますね」
とりあえず念のため女の子を用意するようにくぎを刺しておく。
ここまで言われたら用意しないわけにはいかないと思うから。
例え誰かの息がかかってる人間だとしても、男たちを侍らせて夜を過ごした聖女とみなされるよりは断然マシ!そんないろんなところからヘイトを買うようなことなんてするわけにはいかないんだから!
ついでに、すぐに私を召喚した人たちに必要な物品の購入もお願いしておく。
これは。一緒に必要な物を買いに行こうという展開になることを避けるためだよ。実際、頼んだ翌日に声をかけられたから断る口実を作れて置いてよかったと一安心。
しかも嬉しいことにと言うほどでは人だけど同じグループに女の子が2人ほど追加されて、私も初めてと言って良いような同年代の女の子とのお話ができる機会が生まれた。
「よろしければ、課外活動で行く場所の事を教えていただけませんか?まだこの国の他の場所などの知識はあまりなくて」
「もちろんです聖女様」
「しかし、それでしたら殿下などにお聞きになられた方が良いかもしれませんよ。それこそハチョー様はいろんなことをご存知ですし」
「そうですか?景色の綺麗な場所や、美味しいスイーツの売っているお店などご存知でしょうか?」
「あぁ~。それはそのぉ…………」
「そうしたことでしたら私たちの方が適任かもしれませんね」
女の子たちはそうするよう指示されたのかもしれないけど王子たちに近づけようとしてくるから、私はできるだけそれを避け抵抗しつつお話をしていく。
そうやって誰かを押そうとしない間は私の飢えていた雑談に近しい会話と言うものができたので大満足。
そして良いメンバーが加わったことで前向きになったまま当日。
課外活動、と言うより修学旅行と言った方がふさわしいんじゃないかと言うような他の都市の観光をさせてもらい、私はこの世界で過ごしてきた中でも1,2を争うような楽しい時間を過ごさせてもらった。
そのまま翌日も楽しむぞ~と考えて最高にハイになっていたところで、
「聖女様。少し、お話をさせてもらえないだろうか」
深夜の王子襲来!
気付いたら女の子たちはいなくなっていて、嵌められたことに気がつく。
な、なにをするつもりなの!
そうやって私をざまぁフラグが立ちそうな状況にするのはやめてぇぇぇ!!!!
「では、夜風が気持ちいので外でお話ししましょうか」
「いや、ここで」
「いえいえ。私がそうしたいのです。気温もちょうどいいですし、気持ちよさそうですよ」
できるだけ変なことにならないよう外に出る。
深夜の逢い引き!みたいなことを言われると困るけど、夜中に部屋に入られたなんて話が出回るよりは断然いい。
王子の返事も効かないまま私は外に出て、丁度いいテーブルに座る。
程よく人が近づかず、しかし人目がないわけではにそこに座ることで王子も下手なことができない状況を作る。
あと、念のため自分に補助魔法をかけて何かされそうになったらぶん殴って逃げられるような準備もしておく。
りんごを握りつぶせるほどのパワーなんだから、プラウンのような筋肉の塊ならばともかく王子くらいならどうにでもなるはず!
「それで。お話とは何でしょう?」
「それは、その…………」
後を追ってきた王子に話を促すと、王子は少し躊躇するようなそぶりを見せながらも少しすると覚悟を決めたのか席について口を開く。
最初に魔法で風を起こして声が外に出ないようにしたため、何かされても叫んで助けを求めるという事は無理そう。
やっぱりフィジカルでどうにかできるような状態にしておいてよかった。
で、そうして覚悟と準備はしていたものの、特に内容は愛の告白とかロマンチックな何かではなかった。
拍子抜けと言っては悪いんだけど、口から出てくるのは弱気な言葉。将来への不安とか、自分の実力と周囲の実力の差による焦りとか。そういう話。
イベントとしては心を開いてくれたみたいな描写になるから悪くはないんだろうけど、心配して損したと言ってもいいくらい。
正直、そんなことで私の眠りを妨げないでほしいとすら思ってしまう。
もちろん、聖女らしく悩みを聞くため表面上は笑顔で静かにうなずいているけどね。もちろん無駄なアドバイスもしないよ。
「…………ありがとう。話を聞いてもらえて、少しスッキリした気がするよ」
けど、油断していたわけではないのになぜか話し終わるころには王子が敬語を外してしまっていた。
私に向ける笑顔は普段より取り繕う印象が少ない物で、好感度がどの程度かは分からないけど上がってしまったことを感じる。
これはマズい非常にマズい!
今すぐにこの横っ面を殴るか何かして好感度を下げるようにしなければぁぁぁ!!!!
作中での描写から深夜を想像されるかもしれれないですが、所謂修学旅行の消灯時間前の休み時間くらいの時間帯です




