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33.聖女らしさとは

「そういえば、協力者になるには力を見せなければならないんでしたよね?」


「む?」


動けなくなった魔族を前に私は笑みを浮かべる。

本当に魔王が動けないのかは知らないけど、ちょっと言ってみたいことができちゃったんだよね。

さっきから狙われてばかりでムカつくし、


「逆に、皆さんの協力が必要になるようなことがあるのでしょうか?それだけの力があるようには見えませんが」


「言ってくれる」


魔王は笑う。けど、その体が動くことはない。

代わりに感じるのは、その体の中での力の動き。大きなエネルギーが集約され、膨張するような動きが感じられて、


「自爆ですか?」


「そんなところだ」


冗談のつもりだったけど、どうやら本気で自爆をするつもりらしい。魔王ってなかなかぶっ飛んでるね。やっぱり人間とは違うや。

と、そんな悠長なことをいつまでも考えてもいられない。着実に魔王の内部のエネルギは膨れ上がり続けているから、そろそろ爆発してもおかしくはなさそう。


という事で距離を取らせてもらおうと考えていたところで思い出すものがあって、


「魔族の皆さんは大丈夫だと魔王さんの力加減を信用したうえで行動させてもらいましょう」


「あっ!?助けてもらえるんですか!?」


私が回収したのは、唯一近くに来ていた人間。つまり、追放された人の1人。

さすがにどの程度の威力になるにしても自爆に巻き込まれて消し飛んでしまうなんてことになったら目も当てられないので私と一緒に逃げられるよう抱えておく。

そのまませっかく作ったので大きな結界の内側に入らせてもらって、魔王の自爆が来ても耐えられるように結界の強度も向上させておく。


そしてある程度力を籠め終わってそろそろ良いかと考えた直後、とてつもない光が魔王から放出されてあっという間に私たちを光が飲み込んでいった…………とはいっても、飲み込んできたのは光だけで特に爆風とか爆炎とかは一切なし。


「おぉ。かなり結界の耐久値を削られましたね。さすがは魔王」


「えぇ?逆に今の爆発で壊れないことにドン引きなんですけど…………」


この大きさでこの強度の結界を1人で作れるというのは確かにおかしいとは思う。しかも、この大きさの決壊を作るだけなら今回の世界の力だけでできなかったからね。さすがに強度に関しては前の世界の魔法も使って補強しないとだめではあるけど、それだけ十分聖女の力はぶっ壊れだと思うね。

特に、他人から力を奪えてしまうところが本当にダメだと思う。

この世界のすべての人や動物から力を奪ったら、私は一体どれだけ恐ろしい生き物になってしまうのやら…………。


と、聖女の恐ろしさを考えていてもいいんだけど残念ながらそれをし続けていても事態は改善しない。

今起きたのは魔王の自爆だから、その後に起きたことを確認する必要があって、


「おお。皆さん息がありますか。やはり力加減は完璧なのでしょうか」


「ふんっ。足手まといがいなければ結界ごと破壊してしまえたのだがな」


結界を破壊とは言わずに、結界ごと破壊と言っているところが若干の殺意を感じさせるよね。恐らく、一緒に破壊するのって私だろうから。

ただ、そうして私を脅してはおきながらも、


「これ以上やるとお互い無為なものとなりそうだな」


「え?そうですか?」


「ん?…………そう、だよな?」


「ええ。そうですね」


どうやら魔王はそういうことにしたかったらしい。危うく返答を間違えるところだった。

まだちょっと実力を出し切れた気がしないから個人的にはやれるところを見せたかったけど、その辺りも魔王は読み取ってしまえたってことなのかな?


とりあえずこれ以上戦わなくていいのならばそれで構わない。

魔族がどういう立ち位置なのかは分からないけどこの世界における聖女の力と言うものを使ってしまうのは怖かったので前の世界の魔法を使って魔王の自爆に巻き込まれてしまった魔族を回復させていく。


「ほぅ?聖女の力は魔族には害になるもののはずなのだがな」


「ああ。やはりそうなんですか。気を付けておいて正解でしたね」


警戒しておいてよかったみたい。こちらの世界の力で回復させたら余計に魔族は苦しむことになるってことなんだろうね。

私としてもそれはかわいそうに思うから安全策をとってよかったよ。変に魔族を害してまた協力の話が消えても嫌だからね。


「それで、私たちは協力をするという事でよろしいのでしょうか?」


「ああ。かまわん。それだけの力を持っているのならば敵対しないに越したことはないからな」


「では具体的なお話を詰めてしまいたいところですが…………ここでお話しますか?」


「いや。どうせならばハンキュイーにも話を聞かせてやりたい。あやつらとは対等な関係という事にしてあるから、こちらで勝手に方針を決めるわけにもいかん」


「そうですか。となるとそちらの制圧した場所でお話をすることになる…………しかし、それはできればまだ避けたいですね。場合によっては私の裏切りに国の人間が気が付くかもしれません。遠距離での通話ができるような人間にも警戒をすべきでしょう。ハンキュイーさん?をここまで呼んでいただくことは可能ですか?」


「ふむ。バレても何も問題はないと思うが、そちらがそうしたいなら呼ぶとしよう」


ハンキューと言うのが誰なのか分からなかったけど、魔王が使いをやって呼び出してきてもらったことですぐに理解できた。人間側の代表者のような言い方だったから予想は可能だったけど、推定主人公さんだったんだよ。

そう言えばそんな名前だったような気もすね。

大切なところだからもっとしっかり覚えておくべきだった。


ただ、私は名前を忘れていたけど向こうに悪印象を抱かれているという事はないようで。


「情報提供感謝いたします。おかげで妹弟の追放前に回収のめどを付けられました」


「それは何よりです」


めどが立ってたんだ。追放される弟とか妹は首都の屋敷にいるはずだからまだまだ確保するには時間がかかりそうなものだけど、どうめどを立てたんだろうね?

とはいえあまりそこを詮索しては駄目かと思っていたんだけど、


「そこで聖女様にお恥ずかしながらお力をお借りさせていただきたく思いまして」

「はい。何でしょう?やれることならある程度はご協力するつもりですが」


「ありがとうございます。できる事ならば、私たちだけでも確保のために結界内部への侵入をお認め頂きたく」


普通。ものすごく普通。

ここまで真剣にお願いしなければならないようなことでもないと思うんだけど、どうしてわざわざ最初に言ってきたんだろう?


「あの~。そもそも皆さん結界は通り抜けられるようにするつもりなのですが」


「え?そうなのですか!?」

「そうだったのか!?」


私の言葉で驚くのは推定主人公さんことハンキュイーさんだけでなく、魔王も同じ。他の魔族や追放された人も同じように驚いていて、皆私が通すつもりなどないのだと考えていたことが分かる。


どうしてそんな誤解をされているのかと不思議に思っていると魔王が訳も一緒に話してくれて、


「てっきりこちらの最低限の目的だけ達成させて追い返したいのかと思っていたが」


「そうなんですか?私は被害を最小限にしたいだけで国が滅びたりすることに関しては特に問題だと考えていませんよ?」


「え、えぇ?」

「聖女なのに、か?」


「聖女だからですよ。聖女は、国のためにあるのではなくすべての民のためにいるものですよ?」


「それは、そうかもしれんが…………」

「それって本来建前のはずなのですけどね。今回の聖女様は本当にそれを信念にされているのですか」


え?建前だったんだ。

そもそもそうしたことは誰からも説明なんてされてないから勝手に自分でそういうものだと考えていたけど、本当は違ったらしい。聖女って、国のために働くものだったんだね。

びっくりだよ。


ただ、そう誤解されていたなら今までの反応も分かるね。

となると、この後のことはもっと驚かれるかもしれない。


「ではまず協力内容の1つとして、国の主要人物らしき人がどこにいて何をしているのかを視えるようにしておきましょう」


私が協力をするうえで用意したもの。

それこそが国にとっては非常に痛いと思われる情報。

森を観察する時に使っていた遠くを見る魔法を改良して、人を監視するような魔法を作っておいたの。屑王子などが逃げたら面倒だから作っておいたけど、こういう時に出す手札としては有効だよね。


突然目の前に現れたそれとそこに移されるかなりの貴重な情報に周囲は驚いたからなのか数秒固まり、


「「「「聖女って何なんだ!?(ですか!?)」」」


どうやら私の行動は聖女らしくないらしい。

こんなにも聖女らしく数年生活してきたというのにおかしいね。

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