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32.協力という字は力を

私の聖女パンチ(ありったけのバフを積んで殴るだけ)によって魔族は大人しく(身動きが取れなく)なってくれた。できればもっと平和的に解決したかったところではあるけど、命までは奪ってない上にケガ程度なら私の魔法で回復させられるから問題なし!魔族に回復魔法を使ったことがないから効果がないとかでない限りは何も問題たりえないね。


「え?聖女様?え?なんでみんな倒れて…………」


魔族についてきた追放された人は、目の前の光景にただひたすら困惑している。沢山?が浮かんでいるね。

魔族が一斉に襲い掛かったかと思ったらこれだからそんな顔にもなるよね。

ただ、私としてはこれで済んでよかったという考えなんだけど。場合によっては目つぶしをしたりレーザーみたいなものを出したり植物を成長させて絡みつかせたりなんてしないといけなくなっていたかもしれないんだから。1番簡単な方法で終わらせられてよかった。


まだしばらくは魔族も動けないようだし困惑しているところ悪いんだけど唯一今話ができる人に話しかけさせてもらうことにして、


「お久しぶりですね。お怪我などありませんか?」


「は、はい!お久しぶりです聖女様!特にケガとかはないです!」


「それは何よりです。お力も頂いてしまいましたし、ケガなどすれば回復なども大変そうですからね。私がかけたバフではそこまで回復能力の向上はできませんし」


「やっぱりこれって聖女様が何かしてくれてたんですか…………特に問題はないですよ。回復量とか気にする以前に、そもそもケガをすること自体がないので。逆に、なんでこんな防御力が高くなるんですか?いくら聖女様のお力でもおかしくないですか!?」


「おかしくないですよ。聖女にとってはそれが普通です」


「そうなんですねぇ。これが普通なんて聖女様はすごいです…………って、そんなわけないでしょうが!魔王もここまで強いバフでしかも力を感じないのはおかしいって言ってましたし!今まで見てきた聖女とは明らかに使う力が違うって話でしたよ!」


「そうなのですか?でもそれは、魔王さん(?)の会ってきた聖女の方々の方がおかしかっただけでは?本来聖女の業務には魔王との交流なんてないはずですので」


「それはそうですけど私だって明らかにおかしいと思いますよ!こんな力を持つ人間が量産できるなら世界なんて簡単に統一されてるはずですからね!?」


「大袈裟ですねぇ」


「どこがですか!?」


どうやらこちらの世界にも魔王と言う存在はいるらしい。しかもこの話を聞く限り、魔王と言う存在とはすでに追放された人たちは接触している様子だね。

私によく分からない因縁をつけてくるような存在が前の世界では魔王だったから、できれば魔王なんてものとは関わりたくなかったんだけどなぁ。

この様子だとそんなことも言ってられないかもね。


なんて思っていたわけだけど、それでもまだ私の認識は甘かった。

私の認識では魔王と会うことになったとしてもそれはある程度話がまとまってからだと思っていたんだけど、


「…………この数を1人で対処するか。聖女と言うのは伊達ではないようだな」


「っ!?魔王様!?」


一瞬と言ってもいいほどの時間。

バフをかけていたから気付けたけど、何もない状態でいたら瞬間移動でもしてきたのではないかと言うようなほどの速度で、目の前に新しい人、正確に言えば魔族が現れた。

私の聖女パンチで倒れた魔族の1人が発した言葉から察するに、その相手は魔王。

覚悟を決めた直後に来たからビビっちゃうね。

もちろん、私のこの数年鍛え続けた聖女スマイルが崩れることはないけど。


そして、それに気を取られていて分かっていなかったけどいつの間にか背後もとられている。

同じく魔族らしき存在が私の首元にナイフを突き付けていた。


「あなたが魔王さんでしょうか?」


「ふむ。相違ないが…………魔王さんとはずいぶんと気の抜けた呼び名だな」


「そうですか?私も魔族の知識はあまり多く持っていないのである程度幅広く対応できる呼称にしてみたつもりだったのですが」


「クククッ。だとしても、仮にも王とつく者につける呼称ではなかろうて」


魔王は笑っているから、そこまで不満があるわけではないのだろうことは分かる。

ただ問題は、私に武器を向ける魔族の数が続々と増えてきているという事。

追加の魔族が1秒に3人くらいのペースで増えていて、私の周囲は武器を持った魔族だらけになってしまっている。雰囲気は友好的な話し合いができるものとは大きくかけ離れているね。


「しかし、これだけの数に囲まれているというのに随分と落ち着いているな。先ほどの力で十分対処可能だと考えたか?」


「いえ。単純に私に敵対する気がないからと言うだけですが…………そちらは私と敵対の意志がおありですか?」


ストレートに私への敵意がないかどうか尋ねてみる。

理想としては、ここで否定してもらえることが1番。そうしてもらえばすんなり話も進められそうだからね。

ただ、残念ながら魔王は私の質問を受けて笑みを浮かべると、


「それもまた1つの手ではあるな。そちらはこちらに敵対する気がないとしても、たいして協力する気もないのだろう?それに、聖女と言う存在が後から支えになっても面倒だ」


「あら。そうですか。それは残念です。私としてはある程度被害が出ないような形にしていただけるのであれば協力することもやぶさかではなかったのですが」


「ほぅ?聖女は人類の見方ではなかったのか?それならば多少は条件が変わってくるが…………それでも協力者となるのならばそれはそれでこちらが受け入れるだけの価値を示してもらわねばな。聖女の底力、見せてもらうとしよう。やれ」


魔王から周囲の魔族に向かって指示が出される。そしてその魔族の中には、当然のことながら私の背後に回り込んで首元へとナイフを突きつけている魔族も含まれていた。


しかし、


「む?どうした?…………なるほど。体が動かんのか。これは聖女の力か?」


私の背後に回り込んだ魔族は動くことができない。それどころか周囲の一切が動く気配を見せない。

その様子に違和感を覚えた魔王が声をかけ、そして自分の体が動かしにくくなっていることに気が付く。


どうやら、私の仕掛けが上手く働いてくれたみたいだね。

指をパチンと鳴らしてみれば今までかけていた魔法が消滅して、私の周囲に植物の塊が現れる。この植物は前の世界でお友達から貰ったものであり、


「少し毒を散布させていただきました。ただ体が動かなくなるだけで害はありませんので、ご心配なさらず」


「ふんっ。聖女が毒を使うとはな。貴様本当に聖女か?」


「ええ。聖女ですよ。聖女だから、どれだけ強力な毒を散布したとしても効果が出る前に自分の毒を消してしまえるんです」


「クククッ。聖女らしさのかけらもない発言だな」

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