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29:原作展開を引き起こそう

公爵家から戻った私は、聖女の仕事はしつつも焦りながら待った。その気持ちを悟られないようにはしたけど、それでも内心の焦りは増加して不安になってくる。

そして、


「聖女様。お手をお貸し頂けないでしょうか?」


「はい。何かありましたか?」


「実はまた大罪人が現れまして、力を奪い去っていただきたいのです」


「なるほど。かしこまりました」


来たぁぁ!!!!

待ってたよそれを!!たまには王子も役に立つね!(そもそも王子がいなければ焦ることもなかったけど)

私は嬉々としてその大罪人とされる人のもとへと移動し、力を奪い取らせてもらう。


今日の相手はどこかの貴族の当主らしい。

とても大罪人と言うには、それこそ公爵令嬢と比べたら権力なんてかなり少ないだろう小さな領地を持つ木っ端貴族なんだけど、扱いはいつもと変わらず大罪人で力を奪った後に森へと追放される手はずとなっている。

ただ、申し訳ないんだけど今回は正直その人の事なんてどうでも良くて、


「はい。終わりました」


「え?もう、ですか?」


「ええ。最近鍛えておりましたので。これくらいでしたらすぐに終わります」


「そ、そうなのですか?」


ものの数秒。

今までは数分かかっていたような作業を、私はたった数秒で終わらせて見せた。あまりの早さに王子は本当に終わったのかと疑いすら持っている様子だけど、私はその様子をあえて無視しながら微笑んでおく。


もちろんここまで早くなったことには良い事ばかりではないんだけど、私はさもそれが良い事のように説明させてもらって、


「ただ、どうやらここまでやると痛みが強すぎて気絶されてしまうようですね。失神してしまっています」


「お、おお。本当ですね。これでは痛みがすべては味わわせられないため罰にはならない可能性が?」


「可能性はありますが、相手次第では悪くないかと。相手が気絶してくれるのであれば、暴れられるという心配はせずに済みますから。拘束も簡単ですよね?」


「なるほど。確かに相手次第では選択肢に入りそうですね」


屑王子の表情が変わる。保身を優先したい屑王子としては、相手を気絶させて自分を安全な状態にしておけると言うのは悪いことではないみたい。

私の説明したメリットを素直に受け止めてくれたらしいね。


その後は気絶している間に拘束をされ、馬車に乗せられ森まで運ばれていくことになる。

私はそれを見送るわけだけど、やりたいことはすでに終わらせてある。今回の本命は、普段ならばおまけになっている可能性が高い物。


「ちゃんと仕込んでおいたものを持たせてあるね。良かった」


馬車が森まで行って人と物資を放置して去って行った後の様子を眺めて、私は安堵の声を漏らす。

これが失敗していたら私の命も危ない気がしたからね。


ただ、これが成功したのであればかなり変化が起きると思われる。新しい展開になるはずだよ。

推定主人公陣営が、やっと動き出す理由が生まれたわけだから。






《sideハンキュイ―(元公爵令嬢兼推定主人公)》


「ふふふっ。あなたも災難ですわねぇ」


「ハンキュイー様には言われたくありませんよ。1番初めに追放されたのですから。私の場合は、逆に良かったと思えたくらいです。あんな腐りきった場所から抜けて自由になれるなんて、理想に近い形ですから」


「それは確かにそうですわね」


いつも通り、聖女様がこっそりとサポートをした人が追放されてきた。

今回は貴族家の当主が冤罪で追放と言う形ですし、本当にアホ王子の影響が強くなってきましたし国が腐ってきましたわねぇ。

なんて、最初は考えておりましたわ。

大変だとは思うけど、あくまでそれも他人事。追放された私には、私たちには関係のない事として。


しかし、その認識が甘いと思われたのは、物資に隠された聖女様からのメッセージを読んだ時の事。

それを読んでみればさっと血の気が引く思いになり、


「ど、どうされましたかお嬢様!」


「私の、私の弟と妹が、追放されてしまう可能性が高い、と」


「なっ!?………いえ。しかし、悪くはないのでは?お嬢様も一緒に居られるという事ですよね?あのようなお家から出られて良い事ばかりでしょう」


「そうも言っていられないのですわ。聖女様からのお手紙によれば、いつ同じ場所への追放を続けることのリスクに気が付くか分からない、という事ですの」


「っ!確かに、王子は兎も角他の上層部ならばそれくらいのリスクは回避するように動いておもおかしくはない…………い、いったい、どうすれば」


私の納屋に周囲は顔を曇らせる。

もしこの森とは違う場所へ追放されるようなことがあれば、助けるなんてできないのだから。私たちにはこの森を動くことなんて…………


「ハンキュイー様。やりましょうよ!」

「お嬢様のためとあれば、力を貸すぜ?」

「早く動いた方が良いんじゃないか?」


「いや、でも、私の個人的な事情のためには………」


「何言ってんだよ」

「個人的な助けになりたいって言ってんだ。素直に受け取っておきな」


「皆さん…………」


この頃やっと多くの人から感じられるようになった、人の温かさ。

これをまた今日は一段と強く感じますわ。

私のためだというのに、皆立ち上がってくれるという。


ここまで言われて置いて、何もしないなんてできまして?

出来るはずがありませんわ。

ここまで行ってもらったのです。やって見せましょう。


「皆様の覚悟、確かに受け取りましたわ。やりましょう。国盗りを!」


私は覚悟を決めた。

かわいい弟や妹のため。

私は、母国に弓引く存在となる。


ただ、そのためには準備が必要。弟や妹のためにはすぐに行動する必要があるけど、さすがに何の準備もしないで勝てるほど国と言う存在は甘くない。

だからこそ人員。それが無理でも物資くらいは欲しいかと思っていたところで、


「ならば、我々も力になろう」


「っ!?魔王様!?」


「そろそろ魔族がこのような鬱屈として暗い森の中に閉じ込められることにも飽きてきたのだ。外に出る景気づけに、一国ぐらい落としてしまっても構わんだろう?」

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