27:あなたの大切なモノを奪っていきました
私が魔法をかけて強化しただけの同じ様な人ばかりだと困るかもしれないから、私は今回使用人さんの魔力を抜かないという提案を行なった。
当然、そんな提案に応じは困惑した表情を見せる。力は奪ってしまうものだと思っていたのだろうし、ここでそうしてもらわないと困ると言う木森もあるのだと思う。一方的に暴力を振るっていたりしたから、報復が怖いんだろうね。
でも、私は屑王子が嫌がるなら余計にやりたくなる。
これでもちゃんと考えて提案することなどは事前に練ってあるから、
「まず前提としてですが、これまで多くの人を追放してきたもののその中には1人として力を持つ者はいません」
「え、ええ。それは間違いないですね。聖女様に全員力は奪っていただいておりますから」
「ではそんな人たちの中で、もし生き残る人がいるとすればどのような方になるでしょうか?」
「それは…………力のある者、でしょうか?筋力とか」
まず屑王子に勘がさせるのは、生き残っている人たちの内訳。
当然ながら私のバフの効果もあって全員生きているんだけど、それを知らなければ全員が生き残るとは思えない。
ではそんな中で生き残る人がいるとすれば、それは単純に戦闘力の高い人。
ただ、それ以外のパターンも考えることはできて、
「では、今回追放するこの方の敬愛する殿下の元婚約者の方が生き残っているとすれば、それはどういう形になるでしょうか?」
「え?それは…………」
答えに窮する屑王子。
力のある屈強な人なんかも送り込まれているから、力のない人だけが集まっている状態では元令嬢でか弱そうな推定主人公さんはろくな目に合うとは思えない。
生き残っていたとしても、それはとても苦しい道のはず。
自分で生きたいという意思を持てているかどうかする定かではない。そんな想像ができてしまう。
「そんな様子をこの方が見たら、どうなるでしょうか?微少量とはいえ、力を持つこの方が見たとするのならば」
「っ!?助けるように動く、ということですか?」
「ええ。恐らくそう動くことになるでしょう。そして、もし敬愛する主人を痛めつけたりするような方がいたとすれば、生かしておくかどうかも分かりません」
「な、なるほど!」
納得した様子を見せる屑王子。
使用人さんが力を持たない敵を目にしたらどうするかは予想がつくんだろうね。そしてもし元主人を助けられたとしても、それはその後が決して楽ではないという事も。
力がる場合、できることは私がやるような回復などだけではない。
なんと、力の属性などさえ合えば水(飲めるくらいには綺麗)を出したりすることもできる。
「この力なお少なさから考えますと、全ての人になかに魔法を使うことはできないでしょう。多くて3人程度に何かするだけで1日使えなくなってしまいます」
「そうなると、新しい格差が生まれる」
ここまで言えば屑王子も理解してくれたみたい。
今までの様子から考えて使用人さんは推定主人公さんに対しての気持ちがかなり大きいようだから、首位低主人公さんが苦しい状況に居た場合それ以外まで目をかけるかどうかは怪しい。
王子もそれに気づいたようで、他との軋轢が生じることを理解したみたいだね。
力の使い道として例に水を出すことを上げたけど、そうでなくても攻撃だって魔法で出来る。
ただし、それをすれば水を出せるリソースが減る。
軋轢を生み他から攻撃されれば余計に生活は苦しくなるだろうし、そもそも刃向かってくる相手の数次第では力が足りずに抑え込まれることすら考えられる。
そこまで考えれば屑王子も妄想がはかどり出して、
「力のあるものをこいつが消して、こいつは他から抑えられて命を奪われる。残るのは、群れなければ力を発揮できないような雑魚ばかり!」
とても正義側の思考とは思えないようなセリフを口にしていて(お前が言うな)私に対して綺麗な面を見せることを忘れてしまったのかと思う気持ちはあるけど、こうして勝手に妄想して納得してくれるならば都合が良い。
私の提案が了承されるまでそう時間はかからなかった。
こうして、初めて力と私のバフの両方を持つ追放される人が出現したというわけ。
まだまだ完璧とは言い難いけど、少しは推定主人公さんの陣営も対応能力が上がったはず。
「…………ハァ~」
正直気が遠くなるような思いではある。
これだけやっても、まだまだ追放された人数は軍隊に必要な数を考えると足りない。
1人1人が一般人を圧倒的に超えるような力を持っているとは言っても、できることには限界がある。
だから、この作業がいつまで続くのか分かったものではない。最低でも数年。下手をすれば10年以上のスパンでみなければならないような状況かもしれないとすら思える。
果てしに遭いそれに、私はため息をこぼすのだった。
ただ、そんなものを聞いた私に微かな癒しを与えてくれる存在もいて、
「大丈夫?お姉ちゃん」
「聖女のお姉ちゃんは疲れてるの?」
「ちゃんとお休みしないとだめだよ?」
「ああ。うん。ありがとうございます。ちゃんと休んでるから大丈夫ですよ」
私の周囲にいるのは、数人の小さな子供。
私の護衛についている人たちの子供だったり孫だったりするような子たちと一緒にいるの。
私の護衛についている人たちは私の身を守る意味も兼ねて孫がいるほど高齢な人か愛妻家な人だけにしてもらってるから、その分こうした子供や孫の話を聞くことも多い。そしてその護衛達同士で誰の子や孫が1番かわいいかみたいな話になった結果白熱して全員集めると言ったような事態になってしまったの。
そこで私が相手をした結果思いのほか懐かれて、たまに一緒に遊ぶようにもなった。
前の世界ではちゃんとお友達がいたのにこの世界だと幼児と遊ぶのが数少ない遊びなのかと深く考えれば傷つく事実は存在するけど、それにさえ目を向けなければ癒しになってくれる存在であり時間となっている。
「お姉ちゃん!このご本読んで!」
「構いませんよ~」
「えぇ~。人形バトルしようよ~」
「剣術やりた~い」
「これが終わったあとでやりましょうね~」
子供たちと遊んでいると、護衛達の本気度も変わってくるようなことを期待している。
孫や子供がなついている相手なら、守りたいと思ってくれるんじゃないかと思うからね。ただ仕事でと言うだけでなくお世話になっている相手と言う認識も合わさればそう簡単には心が折れることもないと思う。
家族が人質とかに取られていなければ、の話ではあるけどね。
ちなみに、こうして遊んでいたらなんだか何人かは初恋を奪ってしまったような気もしている。
うぬぼれかもしれないけど、聖女状態の私が魅力的に映るのは分かるからね。だてに清楚で慈愛にあふれてないんだよ。
いつかこの子たちの誰かが私の好みドストライクな清潔高身長クールロン毛になってくれないかな。




