25:監視じゃなくて観察だよ
王子の説得には成功したため、私が力を吸い取った人は食料を持たされ森へと追放された。
そこまでは良かったんだけど、私は追加でやることがある。
「まず森がどこにあるのか、調べさせてもらおうか」
私はこの国の地図を見たことがないし、方位磁石のようなものも持ってない。だから、追放先の森と言うのが具体的にどこにあるのかはあまりよくわかっていないの。
必要だと思ったから最低限人は強化はしてから送り込んだけど、それでも追放先の事を私が知らないというのは問題だと思うためいつかは調べなければとは思っていた。
そんな私はこの召喚されてからの期間、当然ながら回復の魔法やこちらの世界の魔法になれることにだけかまけたりせずに森の方を調べるための手段も整えていた。
1番は周辺一帯を上から見下ろせるような魔法を習得することだったんだけど、それは断念して前の世界で学んだ魔法を改良する方向性で調節。
具体的には、
「視認性は問題なし。馬車の速度でもついていけてるね」
遠くの様子を覗く、双眼鏡を再現するような魔法。
前の世界では元気系政党は主人公なトロエちゃんとその恋人のアニスが襲われた時に様子を確認するため使ったものだけど、今回はそれをさらに改良してかなり遠くまで見ることができるようにしたの。
今も問題なく追放に使うための馬車を折っていけているし、遠くに向かっていってるのにぼやけるというようなこともない。
非常に優秀な魔法となっている。
力を吸収したからそれになれたいという事で今日は1日休みにさせてもらったため、馬車の観察は十分やる時間がある。
魔法を使っているからなのか普通の馬車よりも移動速度は早く、数日かかるという事もなさそうなため私の目的通り問題なく森の方まで追っていくことはできそう。
上手くやれば推定主人公さんの様子とかも見れるかもしれないし、しっかり場所を覚えておこう。
定期的に様子の確認はしておきたいからね。
もしも送り込む人が本当に極悪人だった場合にはバフを解除する判断もできるし。
「この魔法、不正の証拠を調べるのにも使えるかも?…………リスクの方が大きいからやらないけど、そういう手段が取れるっていうのは良いよね」
聖女らしく正しい人間を救う時に相手が悪人出るかどうかを見抜く1つの手段としてこうした魔法は使える。
なんてことを思いながら待っていると、結局その日の夕方には森の方へと到着した。
追放される人はそのまま森の手前にポンと放り出され、馬車は今まで以上の速度を出して森から離れていく。相当森が怖いのだろうことが読み取れるね。
放り出された人はそのまましばらく苦々しい顔をしたまま立ちすくんだ後、与えられた食料を手に覚悟を決めた表情で森へと近づいて行く。
直後、
《sideニンドコ(元役人)》
忌々しい。
まさか冤罪を押し付けられるどころか、こんな場所へ追放されるとは。
どうしても国で働いてほしいと重役が頭を下げてきたからあんな国で働いてやったというのに、こんな仕打ちをして見せるとは。
こんなことなら最初から王国など来なければよかった。
そして、聖女とかいうやつもひどい。
聖女などと言う名前の癖に、あの頭が空っぽな王子よりよほどあくどいぞ?この土地で生き残ろうとする人間がいたとしてもそれが簡単にはいかぬような手を次々と考えてくるなど、まで反逆者を閉じ込める監獄を管理する看守のようではないか。
どこにも神聖さは感じなかったぞ。
「全く。ここで人生が終わりだというのも皮肉な話だ。私は大帝国の宰相となるべき人間だというのに」
独り言をのような愚痴を吐き捨て、私はうっそうとした森の中へと足を進める。
どうせこんなところで食料がなく困るのであれば、奥へと進んで危険な中自身の生を実感したほうがましだと考えて。
しかし、その直後、
「あら。今からでも宰相となるのは遅くはなくってよ?大帝国は無理かもしれませんが」
「っ!?」
背後からの声。
突然のそれに驚き身構えた私の前に居たのは、1人の少女。
こんな場所にいるにしては随分と身ぎれいで、そして気品を感じさせるそれに私は眉を顰め、
「例の王子の元婚約者か」
「ええ。あなたも追放されてきた様子ですわね。しかも、食料まで持たせてもらえるとはずいぶんと私よりも扱いが良い」
「ふんっ!扱いが良い?これは、王子よりも心の汚れた奴が渡してきたものだぞ?聖女と言う名前のくせに心が濁りに濁ったものがな」
「あら?聖女様が?」
「ああ。あいつが言うには、飢えた者がいる場所にこうして食料を持つ者が現れれば強奪が起きるという事らしい。そうしてここに追放される者達が協力する芽をつぶすつもりなようだ」
「あら~。それは大変」
大変、と言う割に対して焦りも感じない。
こいつは本当に理解しているのか?
いや、理解してるのだろうな。だが、理解しても問題ないと思える何かがあるのだろう。
この令嬢、今まで森で暮らしてきたにしては身ぎれいだ。ケガも特に見受けられない。
何かがあると考えて良い。
この魔族が住むとされる森で生き残る何かが。
そんな私の疑問に答えるように目の前の元令嬢は拳を振り上げ、
「食料など、私たちには力があるから問題になりませんわ」
「は?力?」
私が首を傾げた直後、その腕は近くの木へと叩きつけられた。
そしてすぐに、その気がへし折られ近くの木々を巻き込みながら倒れていく。
私はそんな非現実的な光景に呆然とするほかなかった。
「ま、魔法?しかし、聖女に力は全て奪われたはずでは」
「ええ。元々の力は奪われた。しかし、新しい力がるのですわ。きっとあなたにもあるのでは?」
「い、いや、何を馬鹿なことを」
「良いから近くの木を殴ってくださいまし。聖女様が関わっているというのなら、力を授けられているはずですわ」
訳が分からないが、とりあえず殴れと言うのだから殴ってみる。ここで無駄に抵抗してその拳を私に振り下ろされるよりはよほどましだと考えて。
そして直後、バキッ!と音がして巨木が真っ二つに折れることを確認し、私の思考は再度真っ白になった。
「ありましたわね、力」
「ば、バカな」
なんだこの力は。
私は力を奪われたはずだというのに、なぜ奪われる前以上の力が出ている!?
こ、これだけの力があるなら魔法で全て解決できるのでは!?
「…………ん?魔法が出ない?」
「あ。出ませんわよ。当たり前ではないですの。いままでの力はすでに失っているのですか」
「で、では、この力は一体?」
「今までとは別種の力ですわ。おそらく、聖女様が与えてくれたものですわね」
「聖女が?」
何を馬鹿なことを言うのか。聖女なんて極悪人だろうに。力を奪うことはあっても、私たちに力を与えるなんてとても考えられない。
と、思ったのだが、それが間違っていたと気づくのは数時間後。
空腹を感じてきたため貰った食料と森の食料を2人で分けて食べようとしたところで、
「あれ?中に何か?」
「こ、これは!?」




