24:新しい被害者?
好き勝手に女の人へと手を出して遊び惚けている屑王子。
面倒だとは思いつつも会いたいと言われれば私も会いに行くしかなく、
「聖女様。この者達に罰をお与えください」
「はい?」
面会早々、私は牢屋に連れていかれ罪人と面会させられることになった。とはいっても、王子もついてきて解説役と言うか指示役をする様子ではあるのだけどね。
私が視線を向けてみれば、そこにいるのは1人の男の人。
眼鏡姿のいかにも頑固者と言う見た目のその人なんだけど、
「この者は役人だったのですが、愚かにも多額の資金を横領しておりまして。民から献上された大切な税を自らのものにしようなどと言うことを考えた極悪人なのです」
「な、なんということを…………」
なんて悪人なんだとショックを受けているようにも見える反応をしたけど、正直王子のいう事は信用していない。
推定主人公さんの件があるから仕方ないよね。本人も素行が悪いし、不正をただすとかやるかどうか怪しい。単純にこの人は誰かしらの怒りを買って罪を押し付けられたんじゃないかと思っている。
どちらかといえば、なんというふざけた冤罪を押し付けてるんだっていうところかな?
では、ここで私はどうするべきなのか。
当然無罪と言う可能性が高いからと言って、私にそれを証明するような力も権限もない。私が求めるのは、ただただ罪が決まった相手を裁く役職のみ。
…………いや、こうやって罪人に合うのって推定主人公さん以来なんだけどね?そんなに私って犯罪者と面会することはないから。
「私は何をすればよいのでしょうか?」
「こちらへ来ていただいたときと同じように、力を奪っていただきたいのです」
「なるほど?しかし、この型の罪はその罰と釣り合うほどの物なのですか?あの時は確か、大勢の民を苦しめたという事でしたが。今回は横領なんですよね?」
「っ!?も、ももも、もちろんですとも!民からの税を奪うなど、国家反逆と同等。税が減ればそのぶん救える民が減ってしまうのですよ」
確かにそうなんだけど私が聞いた話と規模感が違い過ぎたような気もするんだけど?これだからこの屑王子は適当過ぎて嫌になるよね。
ちょっと突っ込み所が多すぎるし、もう少し質問をしてみようか。
「では、殿下の元婚約者の方が送られた森にはこの方も送るのですか?」
「い、いえ。それをした場合、森で生き残ってしまう可能性が高いように思うのですが」
「力を奪われたのに生き残ることができるのですか?」
「もしかすると前に追放した者も息をひそめて生活しているかもしれません。もちろんどこかのタイミングで命を落とすことにはなるでしょうが、ここで結託されてしまいますと………」
「なるほど。しかし、それなら新しい人を送った方がやはりいいのでは?」
「え?な、なぜでしょう?」
「同じ場所に留まっていられるという事は、そこで最低限食料が確保できるという事ですよね?しかし、そこに人を増やせば食料を持ち続けられるかどうかは分からなくなます」
「なっ!?な、なるほど!!」
天啓を得たと言わんばかりに目を見開き大きく首を何度も縦に振る屑王子。どうやら私の言葉に納得してしまったらしい。
もちろん私とて嘘を口にしたつもりはないけど、必ずしもそれがこの国の利益にならないことを知っている。
なぜなら、私は推定主人公さんに力を与えているんだから。その送った先になるとされる森にどれだけ凶悪な存在がいるのかは分からないけど、さすがに私の数年鍛えた前の世界の聖女の力が通用しないという事はないと思うんだよね。
そして、私の力を与えるのは推定主人公さんだけにするつもりもない。というか、少し前までそのつもりだったけど今その考えはきれいに消え去った。
この元役人さんも追放されるというのなら、私の力を分けてあげよう。
こういう時のために(大嘘)1回魔力を多く消費するだけで半永久的にバフをかけていられるような魔法を習得したんだから。
「では、まずは力を吸い取らせていただきますね」
「はい。ぜひともお願いしたく」
助けてあげるつもりはあるんだけど。まずは苦しんでもらうことになってしまう。
私が力を吸い取れば向こうは苦痛の声を漏らし、私の力が増えていく。最初の頃の感覚をはっきりと覚えられてないから正確なことは言えないけど、おそらく後から奪っただけで召喚された当初の3倍くらいまで力は膨れ上がったんじゃないかな?
推定主人公さんの力はもの凄く多かったしそれくらいになっていてもおかしくないと思うんだよね。
ただ、そこまで私が力は増えてもその苦しんだ人を救えるわけではない。かけてあげる魔法の力の強さが変わるわけではないからね。こっちの世界における力が強くなっても、残念ながら前の世界の魔法は強くできないんだよ。
こっちの世界の力を使えばもちろん強化してあげることはできるとそれはこっちの世界の人には簡単にバレちゃうからそんな手を打つわけにはいかないんだよね。
しかし何もできないというのは私の精神衛生上あまりよくないため、
「追放する時には、少し食料を分けてあげてはどうでしょう?」
「なぜですか?そのような罪人たちに食料を与えるような行為は必要ないと思うのですが」
王子の顔が険しい物へと変わる。私の言葉が罪人に対する慈悲とかそういうたぐいのものによるものだと考えたのかもしれないね。
実際間違えてないんだけど、その辺りはちゃんと建前を考えてあるから問題なし。
「渡す食料は、2日分程度です。1日でたどり着けないような場所に元婚約者の方がいるかもしれませんし、ある程度は森を移動できる状態にした方が良い野ではないかと思いまして。もちろん、あまり多く渡すのも問題だとは思いますけど」
「なるほど。捜索のためですか。それは良いですね」
「ええ。それに、森へ追放される方々は皆様心の汚れた方なのですよね?でしたら、もし食料を持って新しくやってくるものがいればどうなるかはご想像に難くないのでは?」
「え、えぇと?」
おい!屑王子!?
想像に難くないのでは?みたいな尋ね方をしたら首を傾げられてしまったんだけど!?想像に難かったの!?
思ったより屑王子が屑なだけじゃなくて頭の回転も遅くて困る。それくらいなら為政者ならわかってよ~。前の世界の王子連中ならさすがにすぐに理解してたよ。それどころか、もっといい案を出そうと頭を働かせてたと思うんだけど?
他を知ってるだけによけ気に頭が痛いよ。
「食糧難の悪人ばかりが集まる場所に少量とはいえ食料を持ち込めば、奪おうとする方が出てくるのでは?」
「ああ!なるほど!…………いや、もちろんわかってましたとも。ええ。ただ、聖女様と考えている方向性が同じなのか気になっただけですとも。ええ」
嘘つけ。
あきれるばかりだけど、とりあえずは納得させられたかな。
このまま私の思惑通りに動いてくれると助かるんだけど。




