19:学校に行こう
「やっぱり歩きやすさが違う」
服が体の動きを阻害しない。靴が足に密着し、なおかつ重くなく痛みもない。
これのなんと素晴らしいことか。
私は改めて学校に登校する最中にも現代科学のすばらしさを認識した。異世界の見た目が豪華なせいで動きやすさが微塵もない服や靴とは段違いだね。私に合っているのはこっちだよ。
他にも鞄とか髪留めとか良い物を上げていけばきりがない。
こっちの世界に戻してくれたのだろう魔王にはすでにかなり感謝をしているよ。向こうの世界では私に対して何をしたのか分かっていないだろうから恨まれてるだろうけど、もし再召喚されることがあればかばってあげてもいいね。
もちろん、ああして不意打ちでやられたところには苦言も呈したいけど。
「道はこっちであってるよね?」
現代技術のすばらしさを甘受するのは良いけど、少し不安なのが学校へと向かう道。3年前とは言え学校への行き方くらいは覚えてるかと思ってたんだけど、意外と途中の景色が見覚えのないものに感じられてしまったりしたんだよね。
記憶の信用のできなさにびっくりしてるよ。
一応警戒してスマホで一度住所と行き方を確認しておいてよかった(なお、その前にスマホのパスワードを忘れてて苦戦していたことは内緒)。
そのままどうにか学校まで行くと事前に確認していた通りのクラスと番号のところに自分の靴をしまい教室へと向かうことになるわけなんだけど、
「やっば。自分の席が分かんない」
まだ靴箱などは番号順になっていたりしたから分かりやすかった。自分おおぼろげな記憶と照らし合わせればそう苦労もなかったからね。
ただ、教室内に入ってその余裕は崩れ去る。
私は自分の席を覚えてないの。さすがに席を変えたりもしているから、知るわけがないんだよね。3年前にどこの席に座っていたなんて記憶があるなら凄いと思うよ。
ただ、そんな私にも光が差し込む。
「おはよ~。独、なんか姿勢が良くなったね」
「ああ。ひ、じゃなくておはよう」
「ん?うん。なんかあった?」
「いや、何もないよ~」
思わず久しぶりと言いかけて私は挨拶を言い直す。
話かけてきたのは友人の1人。毎日話をする相手だったんだけど3年も昔の事だからかなり懐かしく感じるね。距離感を忘れてしまってるし、なんだか昔のような距離感に急に戻すのは気恥ずかしいような気もしてしまう。
とは言っても向こうにとってみれば特に変なことではないんだろうから、不自然に思われないように頑張らないとね。
「そういえば、今日宿題とかあったっけ?」
「あるよ。数学の課題を授業前にやっておかないとだめだったはず…………もしかしてやってない?」
「どうだったっけ?忘れちゃった。悪いんだけど、私は鞄見てるから私の机の方確認してくれない?」
「はいはい。分かった。もしやってないんだったら私の見せてあげるからね」
「うん。ありがとう」
私のもとにやってきた希望。友人。
それにより私はそれとなく自分の机を確認する秘策を思いついてしまった。
すでに課題はやっているんだけど、それを忘れたような気がすることにして自分の机を友達に確認してもらおうと思ったの!
私ってば頭いい~
「ねぇ。確認するのは良いけど、独の席ってどこだったっけ?」
「え?」
やっば~い!
策士策に溺れる!
完璧な作戦を思いついたと思ったら急に大ピンチになってしまった!この聖女の私の目をもってしても見抜けなかったよ!!
どどど、どうしよう!
ここで答えないと不自然だよね?でも答えられないよ。他の関係ない人の席とかいうわけにはいかないもんね?
一体どうすれば!?
「って、そういえば独の席は1番後ろだったね。覚えやすいところだったんだった」
「ア、アハハッ。そういう時もあるよね~。私も忘れちゃってたかも~」
「なんで独が忘れんの!?相変わらず独特なボケをかましてくるね」
危な~い!
どうやら私って後ろの方の記憶に残りやすい席だったみたい。こういう時に日ごろの行いが出るよね。助かった~。
ということで、そうして私はどうにか危機を回避しながら学校生活を再開させていく。
さすがに何度か変なことをして首を傾げられたことはあったけど、大まかには問題も起こすことなく潜り抜けたと言ってしまっていいと思うね。どうせこのくらい変に思われるのは不本意だけどよくあることと言う認識を友達たちもしているし、数日もすればきっと忘れてるはず。
「あぁ~。痛~い。部活で擦りむいたところの絆創膏がはがれてきちゃった」
「わ~。大変だね。魔法使おうか」
「ま、魔法?なぜ?使えたの?」
「え?…………いや、使えないけど言ってみただけ」
「何今の間!怖いんだけど」
忘れてくれる、はず…………。
まだ異世界の常識と聖女の振る舞いが抜けてなくてマズいね。早急に矯正しないと。
とりあえず、ごまかすためにもいろいろと話をしてみよう。
ゲームとかアニメとかのイケメンの話でもしてれば簡単に話題は変えられるから、
「…………はぁ~。現実で私の好みの人がいない~」
「当たり前でしょ」
「独の好みは狭すぎるから」
「クールロン毛だっけ?」
「清潔高身長クールロン毛ね。清潔感も高身長もなくなったら困るから」
「はいはい。二次元とでも結婚してな」
「異世界とか行かないと見つからないんじゃない?」
「異世界に転生できるトラックにぶつかるように祈っとくね」
「サラッと私がトラックにひかれるのを祈るのやめてくれない?」
私はなんだか異世界でも覚えのあるあしらわれ方をされていた。
そんなに私の好みって現実にいないかな?(現実で初恋がまだな人間のセリフ)
なお、言っておくと異世界に行っても好みの相手には出会えないよ。
残念ながらどれだけ探しても清潔高身長クールロン毛に私は出会えなかった(血涙)
主人公の好みをイメージてしてもらうとするなら、ヒ○マイの神○寺先生です
現実だとこういうイケメンさんにはなかなか出会えないし、異世界に出会いを求めるならこれくらいとがってる好みの方が良いかと考えての設定です(主人公は出会いを求めたりしてないけど
もちろん作者もこういうイケメン大好きです!




