18:魔王襲来、そしてさよなら!?
トロエちゃんが暴れてから数か月もしない間に魔王がやってくることになって…………となる展開を予想していたんだけど、特に何もないまま2年以上が経過してしまった。
その間に使える魔法が増えたり種が増えたりトロエちゃんと王子の正式な婚約が決定されたりトロエちゃんが宗教的に大切な銅像を壊してしまったりお友達たちが政治的な争いに巻き込まれて私がそれを収めてもう一度仲良くできるようにするために奔走したりしたんだけど、
「ついに魔王様がこられるそうですわ」
「やっとなの?随分長かったね」
本当に長かった。
まさか魔王の話が出てからここまで時間がかかるとは。
途中から、もう来ないんじゃないかとまで思ってたんだよ。なんでこの卒業なんかも近いタイミングでやってきたんだろうね?
…………もしかして、これは原作展開だったりする?
誰が関わるのかは分かんらないけど、卒業間違ってことは卒業パーティーで何か事件が起きるなりしてそこで魔王が関わってくる可能性が?
そこまで考えた私だったけど、意外なことにその考えは間違っておらず、
「ふむ。美しいな」
「あ、ありがとうございます?」
学園の卒業パーティが行なわれている最中、噂の魔王がやってきたと思ったらこれだった。
魔王が話しかけているのは清楚美少女聖女なこの私…………ではもちろんなく、カトラテちゃん。
やはりそっち関連のキャラクターだったみたいだね。
卒業パーティーで会うとなると、婚約破棄系のイベントに関わってくるのかもしれない。
カトラテちゃんが婚約者である王子から婚約破壊されて、そのカトラテちゃんを魔王が拾うみたいな展開はあり得ると思う。魔王もカトラテちゃんにハートを向けているし、間違いないんじゃないかな?
「我が妻となれ」
「申し訳ありませんが、私は殿下の婚約者ですので」
ただ、こうした展開になってもカトラテちゃんは困り顔。
王子と仲が悪く婚約破棄されるような展開にはならないから、魔王から愛を囁かれてもなびかないし攫っていかれることもない。
困り顔ではあるけど、魔王からの誘いはきっぱりと断っているね。
大丈夫かな?
実は魔王が人間側に攻撃を仕掛ける予定で、カトラテちゃんが嫁ぐからそれを思いとどまるみたいな原作の展開だったりはしない?急にこんな現場を見せられると不安になってくるんだけど。
ただそんな私の不安をよそに話は進んでいく。
魔王が更に口説こうとしそれをカトラテちゃんがかたくなに拒んでいると婚約者である王子までも参加して拒否を始める。
さすがに魔王もその2人の仲睦まじさを見ると引かざるを得ないようで、
「この場にいる者は大半がすでに婚約者などを有しておりますわ。口説かれても困ってしまいます。特に私のように身分が高い者は珍しい事ですが基本的に婚約者との仲が良いので」
「なんだと?では、婚約者がいないのは誰なのだ?」
「そこの聖女様は今のところ婚約が決まっておりませんわね。様々な婚約先が検討はされておりますが、まだ全て検討段階ですしどれにもならないという事だって十分ありえます。ちなみに、私たちの仲が良いのは聖女様のお陰でもあるのですわ。聖女様は私たちの溝をふさぐように尽力してくださったんですの」
「何ッ!?聖女が?…………そうか。貴様がか」
あれあれ?
カトラテちゃん対が魔王と話していると思ったら、矛先が私に向き出したよ。魔王がものすごい険しい目つきで私の事を見てくるじゃん。
魔王は強いって話だし、睨まれると普通に怖いんだけど。
いくら聖女だからって魔王に勝てる気はしないよ?どれくらい魔王が強いのかは分からないけど、魔族最強っていうくらいだから最低でも私とトロエちゃんの2人がかり程度じゃ勝てない相手だと思うんだよね。
とは言っても、それを魔王に直接言いうわけにもいかない。
とりあえず聖女らしく裏のない笑みを(そう見せようとしているだけで裏はありまくる)をしておいて、
「どうかされましたか?」
「貴様、ずいぶんと余計なことをしてくれたようだな?おかげで我の花嫁が消えてしまった」
「陛下に花嫁がいらっしゃったのですか?特に私が誰かの命を狙ったことはないのですが、どこで消えてしまったのか教えていただいても?」
「貴様が必要もないというのに婚約者同士をくっつけようとするから本来別れる運命だった者達がその定めから外れてしまったではないか」
「そうなのですか?私には運命などよく分かりませんが…………それでより多くの人を救うことができたのならば嬉しいですね」
「よくもぬけぬけと…………!」
より魔王の形相が険しくなる。
運命だとか良くわからないことを言ってるけど、魔王はカトラテちゃんが王子とくっつかないといういわゆる原作展開を知っていたようだね。
もしかしたら私と同じで異世界のそういう知識があるのかな?と思ったんだけど、今までの言動を考えるとそういうわけでもなさそう。もしかしたら、未来を見る力とかがあってそこでそうした場面を見ていたりしたのかもしれないね。
「これ以上余計なことをされても面倒だ。貴様には消えてもらうとしよう」
「はっ!?」
魔王は唐突に物騒なことを射てきた。
さすがにその言葉は無視出来なかったのか、周囲の護衛が一斉に私と魔王の間に入ってくる。
こっそりとだけど、その人たちと自分に身体強化の魔法をかけて、植物の種もいつでも成長させられるように準備はしておく。
「何をされるつもりですか!」
「案ずるな。命までは奪わん」
「ですから何を!…………って、魔法!?」
魔王の手からあふれる光。
間違いなくそれが魔法だと分かったけど、それを回避するような手段を私は持たない。さすがに走っても逃げられなかったね。
魔王に向かってトロエちゃんが飛び掛かっているのが見える。カトラテちゃんなどお友達たちが魔法を放ちナイフを投げ、王子などその婚約者たちが剣片手にかけているのも見えた。
でも間に合わない。
光は私を包みあっという間に飲み込んでいった。
パーティー会場からは、私の姿が完全に消え去る。
こうして世界から、聖女が1人減った。




