14:ご都合主義にもほどがある
トロエちゃんとアニスの恋の行方をお友達たちと共にじっくり眺めつつ、たまにサポートをする。
私はそう決めていた。だというのに、
「は?私が婚約?アニス殿下と?」
「はい。どうやらそういう話が出回っているようなんですの」
国内で私とアニスが婚約をするという話が出始めているらしいとカトラテちゃんから教えてもらった。
つまりそれは私が、最悪の場合トロエちゃんから相手を奪うという事になってしまう。
それならそれで、「君を愛することはできない」とか言われそうで私の主人公っぽさが上がりそうな気もするけど、それ以上に私のポジションが悪役寄りに傾く危機感の方が強い。
「なぜそんな話が?」
「殿下が隣国で強く支持されているから、という事ですわ。優秀ですので貴族たちも殿下につこうと考えている者が多く、さらには国民も聖女様に治療を殿下がお願いしたという話を聞いて非常に期待を寄せているようでして」
「なるほど?つまり、殿下を隣国の国王に据えて乗っ取りたいわけだね?そして、その婚約者はやっぱりこの国の息がかかっている人間で、なおかつ隣国で政権基盤が揺るがないように人気のある人間を据えたいってところかな?」
「その通りですわ。当然ながらケガを治療した聖女の人気と言うのも同時に高くなっているようですから、その2人が上に立てば国見からの反発はまずないだろうと考えているようです。後は殿下の力で貴族などは大方制御できるという意見のようで。私も政治が絡んできますとさすがに反対もしにくいのですわ」
「なるほどねぇ。あんまり変なことに巻き込まれたくはないんだけどなぁ」
どうやら、隣国でやったことが思っていた以上に影響を出してしまったみたい。
集まってきていた人たちだけとはいえ、かなりの人数を魔法で治療したから情報が伝わる速さも早かったんだろうね。
そして、このいいタイミングを逃すわけにはいかないという国の立場も理解できる。
そんな支持率の高い人間が国内にいるなら、抱き込んでおかないわけにはいかないよね。
ただ、
「そうなると気になるのは、殿下が留学してきた理由だよね」
「ええ。恐らくですけど、権力争いの関係であまりにも強すぎるがゆえに放り出されたのでしょう」
強すぎるから。そう聞くと良い事のようにも思えるけど、結局国外に放り出されたという事は一度負けたという事にほかならない。もちろん本人がどう考えているかは分からないけど、周囲は確実にそう認識するはず。。
つまり、かなり才能はあって信頼も厚いんだろうけど絶対ではないという事が示されてしまったというわけ。
だからこそ、絶対に指示すれば王子が勝って王様になるかどうかは不明と言うわけ。
でも、今回の留学がどれだけの長さになるかは分からないけど、長くてもこっちにいる時間は5年くらい。
その後に戻ってくるという事は王子に敵対する人達も分かっているはず。
それこそこっちの国の貴族や王族とも話をするし中も深めるという事は分かっているはずだから、
「戻ってくる前に決着をつけるか、もしくは戻れなくするか。どちらかにしておく必要がある?」
「ヒトが婚約をすると余計な火種になるかもしれませんわね。そこを突けば多少はそういったお話は無くなってくれるかもしれませんが」
「どうだろう?それをするリスクはあるって思っているかもよ?たとえ影響力は大きくできなくても、向こうの国を弱体化させることはできるだろうから」
どう転んでも、それこそ戦争なんてことにさえならなければたいていこっちの国としては利益がある。
婚約者の私も勝つなら妃にできるし、負けても婚約相手が消えるだけでたいしてデメリットにもならないと言う考えなのかもしれない。
ただ、そう都合よく話が進んでくれるかどうかは怪しいところ。
隣国の決着が早々についてくれるならばそもそも王子を国外に出したりはしないだろうけど、
「キャアアアァァァ!!!!」
「っ!?悲鳴!?」
「なんだか既視感がありますわね!」
突然聞こえてくる悲鳴。
いくつかガラスが割れたような音も聞こえて、何かしら事件が起きたことは分かる。
すぐに外を見てみれば、なんだか見覚えがあるような黒ずくめの集団が。
どうやら集団で誰かが襲撃を仕掛けてきたみたい。
「学園だって警備は厳重ですのよ!どうなってますの本当に…………」
「いったん警備体制の大幅な見直しが必要だろうね」
軽くいっているけど、残念ながら状況はそこまでよくないみたい。
以前から作っていた光を活用し遠くを見る魔法の結果、私は隣国の王子のアニスが血を流して倒れているとことに気づく。
周辺の敵はすでにトロエっちゃんが自分の肉体を強化して殴り倒したりとかしたみたいだけど、血を流す量が多くて急がないとマズいかもしれない。
「…………ん?」
「ヒト?どうかしまして?」
「今私たちが向かっているのってどこ?」
「避難口ですわよ?学園からすぐに脱出しなければ」
油断してたぁぁぁ!!!!
完全に間違えていたよ。そういえばそうだったね。この学園だと自分の身を優先しなければならない。特に私やカトラテちゃんは身分とか持ってる力とかもあって絶対に危険に身をさらしてはならない存在だよ。助けになんていくわけがないんだよね。
「アニス殿下がケガをしているっぽいんだけど助けに行かなくていいかな?周辺は特に脅威もないと思うんだけど」
「殿下が!?…………どうでしょう。学園内でケガをしてそのまま命まで落とすなんてことになったら確実にこちらの過失を追及されますわよね。実行犯も向こうの国の人間ではあるんでしょうけど」
「なら、私は行ってくるね。カトラテちゃんは急いで騎士とか呼んできて!」
「分かりましたわ。私が呼ぶ前にすでに応援の声はかかっているでしょうけど。やれることはやっておきます。ヒトも自分の身は最優先にして行動してくださいまし!
「分かってる!」
一旦別れる。
私はアニスのところに。カトラテちゃんは避難口の方に。
すぐにカトラテちゃんの近くには他の主要な人達も集まってきて一緒に逃げていくから、その護衛の数も多く成っているし生き残ることは問題なくできると思う。
問題は私だよね。
アニスの元まで急ぎつつ、襲われないように警戒までしておかないと!
周囲をシッカリと魔法で見まわして魔力も感知してとやりたい………とは考えているんだけど、正直そこまでしてる余裕がなさそう。
これでもかなり全力で走っているものの、それでも間に合うかどうか怪しいくらい出血量が尋常じゃない。
トロエちゃんも必死でどうにかしようとしているけどどうにもならず、焦りか何かでその瞳から大粒の涙をこぼし全身から光を放っている。
「…………ん?光ってる?」
その時、私は目の当たりにした。
ご都合主義的な主人公補正による展開を。
「えぇ?あれって回復の魔法だよね?なんでトロエちゃんが使え点の?覚醒ってやつ?」
トロエちゃんが今まで使えなかったはずの回復の魔法を使用した。
見て分かるくらいにはその魔法は神々しく、そして実際に王子の傷も見る見るうちに小さくなっている。
さすがに私の魔法には及ばないけど、それでも大けがを無傷の状態に戻すには十分。
私はこのとき、トロエちゃんが間違いなく主人公適性を持っているという事を改めて認識することになるのだった。




