13:まだまだな2人
「見てください聖女様!持ち上げられちゃいましたよ!?」
「そういですね。しかし、危ないので下ろしましょうか。変に手から離れて地面をえぐってもいけませんし」
「そうですか?じゃあ、下ろしますね…………あっ」
一瞬にして私に危機感を抱かせる声。
私が気づいたときには、大きな岩が支えていたその手から滑り落ち地面に突き刺さっていた。
かなりお金をかけて整えていおるのだろう綺麗な学園の地面に見事なくぼみを作り、周囲の時間が止まる。
私も思わず笑顔が引きつりそうになるけど、
「どうしましょう?掃除とかしなきゃいけないでしょうか?」
それを引き起こした本人はたいして気にした様子もなく私へと問いかけてくる。しかもそれだけではなく、失敗したとばかりにもう一度のその岩を持ち上げようとしている。
や、やめて~!絶対また落としちゃうでしょ!?なんでさらに地面を傷つけようとしているのかな!?
ゴミが落ちていない場所だとポイ捨てをする人が少なくなるって話を聞いたことがあるけど、地面に傷がない場合には傷つけないようにする人が多くなるなんてことはないのかな!?かなりお金がかかってそうなのに、一瞬で吹き飛んでしまったよ。
「やめろトロエ。それはトレーニング用のものではないんだぞ?」
「あっ、殿下!」
「っ!やめろ!岩を持った状態で振り向くな!?」
「ダメでしたか?じゃあ放しますね」
ドスンッ!と音を立てて岩が地面に置かれる。土煙が舞い、また地面が荒れててしまったことが分かる。
声をかけてきた王子が頭を抱えているね。
ちなみに、トロエと言うのが岩を抱えていた女の子の名前。
王子を背負って私の元まで走ってきた隣国の平民で、現在は学園でいろいろと学んでいる。
ついでに家族も一緒にこちらへ移って来たらしく、留学先のこの国でも楽しくやれているらしい。
学んでいる内容は分かる通り元から才能がありそうだった肉体強化系の魔法など。体力だけでなく、単純に筋力の強化もできるようになったみたい。
さすがにまだ私も瞬間的な強化後の火力では負けてないけど、才能から考えていつ負けてもおかしくはなさそう。
ただ、課題もあって、
「殿下もやってみてくださいよ!凄い軽く感じますよ!!」
「ぐ、ぐわぁぁ!!!やめろ!お前の魔法は他人にかけては駄目だと言っているだろうがぁぁ!!!」
「えぇ~。今回は完璧になったと思ったんですけどね」
魔法をかけられて、顔を激しくゆがませる隣国の王子。一応名前を言っておくと、アニスとかいうらしい。基本殿下って呼ぶから名前を口にする機会はないかな?せいぜいこっちの国の王子のプロゲルが一緒にいるときくらいしか名前を言う必要はないんじゃない?
では、そんなアニスがどうして苦しんでいるのかと言えば、それは単純に魔法によって肉体の出せる出力が上がりすぎてそれに肉体が耐えられないから、だね。
本人がやる文ぶんには問題ないんだけど、他人にかける場合には硬さと爆発力のバランスをとることが難しい様子。
トロエちゃんのは私のように多くの人を強化するっていうのはまだまだ無理みたいだね。
「保健室に行きましょうか。肩を貸しますね!」
「あ、ああ」
トロエちゃんはアニスに肩を貸す。
さすがにケガをさせてしまったことに負い目を感じているのかもしれないね。特に、私に合うまでものすごく衰弱していたから余計に心配になると思う。
そんな風に肩を貸された王子はそうしてトロエちゃんと体を密着させて少し照れている。
相変わらずトロエちゃんには気持ちが通じていないのか、今のところ王子側の一方通行と言う感じはするかな?とはいっても、まだまだトロエちゃんの事を私が知らないから、意外と気づいていても隠しているだけと言う可能性も考えられるけど。
「あのぉ。私がいることをお忘れですか?そのケガくらいでしたら治しますよ?」
「「あっ」」
ただ、そんなじれじれな雰囲気の中悪いんだけど私は声をかけさせてもらった。わざわざ保健室なんていかなくてもこれくらいなら私の魔法でどうとでもなるんだよ。
2人は完全に私の存在を忘れ去っていたようで、そろって今気づいたというような顔をしている。
「いいんですか?この間は魔法を使うのに色々と大変そうでしたけど」
「他国での活動だったうえに重傷だったからこそ簡単に手を出すわけにはいかなかったというだけですよ。この国の中で、なおかつそこまでひどくないケガであれば特に私が魔法お使うことに問題はありません」
「へぇ!そうなんですね」
「では、お願いしてもよろしいでしょうか?」
2人は離れて、王子が私の方へと寄ってくる。
もちろん少し王子は名残惜しそうにしてたんだけど、一瞬トロエちゃんの方も不満そうな表情になっているようにも見えた。もしかしたら、意外と脈ありだったりするのかも?
大丈夫だよね?私、敵役になっていたりしないよね?
物語的に、2人をねたんで引き離そうとするキャラとかになってない?
今2人の密着している時間を短くしたのはマズかった!?
ちょっと不安になってきた。
「ああ。おひとりで今立っているのは危ないですよ。治療が終わるまではトロエさんが支えていてあげてください」
「はい!分かりました!」
「そ、そうですか?立つだけなら問題ないのですが」
「念のためです」
支えるとしか私は言っていないのに、トロエちゃんはまた肩を貸し出した。立っているだけだし、背中を手で押しておくくらいでもいいはずなのにね。
やっぱり、脈ありなのかもしれない。というか、このいかにもな主人公っぽさを考えれば脈ありでない方がおかしいくらいなような気もする。
まだ新しいイケメンが出てきてかっさらわれるルートも考える必要はあるかも知れないけど、とりあえず私は巻き込まれないように気をつけなければ!
邪魔をせず、されど知らないうちに巻き込まれているなんてことがないように情報収集はするくらいの距離感を保つんだよ!
「…………はい。これで治せたんじゃないでしょうか?」
「ええ。もう痛みはないです」
「良かったです!じゃあ、もう1回今度は失敗しないように魔法をかけますね!」
「やめろぉ!」
私が魔法をかけ終わると、2人は仲良さげに騒ぎ始める。
その間に、私は邪魔をしないようこっそりと離脱。
するとその先で思わぬ人たちに出会って、
「うん。ああいうのもいいですわね」
「そうだね。なんだか、もっと君の事を好きになった気がするよ」
攻略対象だと思ってたイケメンたちとその婚約者達が集まってのぞき見をしていた。
初々しい(?)2人の関係を見て楽しんでいるみたい。
もちろん、その中でのイチャつきも忘れずにね。
…………そして私は今日も、そんな初々しいことができる相手もそれを一緒に眺める相手もいないまま。
でも、いいもん!私はお勉強と魔法とは結婚してると言って良いくらいには長く一緒にいるんだから(泣




