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12:聖女として

「完璧でしたわね!向こうの国に深入りすることもなく殿下に貸しまで作れたのは大きな成果ですわ!」


カトラテちゃんは満足げな笑みを浮かべながら大きく頷いている。

結局、すぐに集まってきていた人たちの治療は完了した。私の魔法もかなり効果が上昇しているから範囲もかなり広いし、そのうえ回復させる力も強い。時間がかかる理由がないというわけ。

ちなみにそうした人たちへの説明では、貸し借りと言う話はせずに王子がお願いしてきたからという事で通した。

お陰で、私への感謝ももちろん王子にも感謝の言葉を述べている人が多かったね。


ただ、そうしたからこそ今回は完璧な対応ができたと言い切ることができない。

私はカトラテちゃんに首を振ってこたえて、


「いや、私と言う人間が貸しを作ってしまったのはマズかった。本来なら、あそこは国の人が言葉を挟んでくれることが1番良かったんだよね」


「え?それは…………聖女が貸し借りで人を治すか治さないか考えることはマズいという事ですの?」


「そういうこと」


聖女が人を治すことに迷うなんて、本来はあり得ないことのはず。しかもその治す理由が貸しを作れるからなんて、実に聖女らしくない。

本当は一緒に来てた人に口を挟んでもらえればよかったんだけど、相手が王族だからなのかあまり口も出せずに私が目線で求めても口を開いてくれなかったんだよね。

こんな展開は想定できなかったから仕方がないんだけど、もっと連携が上手くできるように話を詰めておいた方が良かった。


外交が絡んでくると本当に難しい。

聖女にこんなこと考えさせないでほしいよね。


「その役割は私でも出来ましたわね。気づけず申し訳ない」


「いや、いんだよ。カトラテちゃんは別にこの件を主導して動けるような立場にはないでしょ?逆に、勝手に貸し借りの話を決めて私に治療をさせたという事になる方がまずいんじゃない?いろんなところから糾弾される材料になっちゃうでしょ」


「た、確かに。となると、やはり最善なのはあの方が口を挟んでくれることでしたか」


「そうだね。ただ、何も言ってはくれなったけど」


ここまでの会話で、カトラテちゃんが1番のお偉いさんに対して不信感を抱き始めていることを感じる。私がそういう風なことになる要素を口にしてしまったから仕方のない事ではあるんだけど、さすがにかわいそうな気もするよね。

向こうだって気づいていたのかもしれないし、そのうえで何も言わなかった可能性だってあるんだから。私は私の分かる範囲で最大限やったつもりだけど、国の他の情報を握っている人からすると下手なことができなかったかもしれないよね。


「聖女らしくない発言となると、今回の貸しの事をどこか公の場でされてしまうとこちらは否定するしかなくなりますわね」


「そうだね。そうすれば向こうは借りなんてなくなって、無償で大勢を治療してもらったというだけになる。お得だよね」


私たちとしては、聖女が貸し借りで治療をするなんて言う話を認めるわけにはいかないから向こうに貸しの話をされたら否定するしかない。

となると結局は今回成果なし、と言う結果にすらなってしまう恐れがある。


「その辺は国に頑張って考えてもらうしかないね」


「丸投げですわね…………でも、それが1番かもしれませんわね。私たちも国同士の交渉内容など知りませんし、全てを把握できているわけではないのですから」


課題は多かったけど、私たちにできることはやった。だから、後は国に丸投げしようと思う。

それよりも私たちが今考えるべきは、


「お土産をどうするかも考えておかないとね。騎士の人とかにお願いすれば少数で別の街とかに行って買い物してきてくれたりするかな?」


「ああ!そうですわ!私としたことが殿下に買うお土産を忘れていました。すぐに声をかけなければ!!」


まずはお土産。

私もカトラテちゃんも、他国に行くという事は周囲も理解しているからお土産は必須。たとえ事情があったとしても、全く何もないとなると向こうからガッカリされかねないから。

逆に、少し無理はしたけど何とか買ってきたという事にすれば向こうは嬉しく思うだけでなくこちらの心配までしてくれるはず。

もしかすると危険な中でも買ってきてくれた、と言う考えで嬉しさは通常よりも大きくなるかもしれない。


特に婚約者の王子に対してお土産で気持ちを見せつけるんだということを考えていたカトラテちゃんは、急いで周囲の人に声をかけてお土産を買ってきてもらえないかと要求している。

問題なさそうなら私も一緒にお願いしよう。


なんてこともしつつ私たちの帰路でのおしゃべりは続いて、


「それにしても、不思議な2人だったね」


「ですわね。殿下は以前から見ていた通りでしたし偏屈そうという印象がありましたけど、まさかあのような性格の平民と仲が良いとは。驚きですわ」


「ただの平民と言うには身体能力がかなりおかしかった気がするけどね」


「確かに。あそこから王都までは結構距離があるはずなのですけど、それを殿下を担いだ状態で走ってくるなんて信じられませんわ。どんな体力をしているのでしょう?下手な騎士よりよほど体力に関しては上に行かれてますわよ」


「そういう魔法だったりするのかな?」


「ヒトの使うような補助魔法系にもしかしたら体力増強もあるのかもしれませんわね。ただ、雰囲気はあまり魔法使いと言う感じはしませんでしたけど」


思い出すのは、私たちの元までやってきた2人の男女。

一緒に数人の騎士もついてきたとはいえ、ほぼ1人の力であそこまでやってきた平民の女の子の力は素直にすごい。

そして何より、ものすごく主人公っぽい!

これは、下手に治療を拒否していたりすればあの天真爛漫な女の子が私のお部屋に直撃訪問なんて展開になっていてもおかしくなかったと思う。

下手したら誘拐、とか。


私ができる攻撃方法などを考えればそうそう簡単に誘拐されるとも思いにくいけど、あの主人公っぽさを感じるともしかするんじゃないかと思ってしまう部分があるよね。

流れによっては、あの子の聖女覚醒ルートすら想像できてしまう。

例えば、私があの治療した王子に惚れて、治すかわりに自分の婚約者になるように言ったりとかした場合は敵対ルートに入って覚醒とかないとは言えない。


「何にしても、見ていて楽しい2人組でしたわ」


「最初の頃の初々しさでも思い出した?」


「あんな感じではなかったですけど、でもああいう形になるのも楽しかったかもしれませんわね。殿下も、私があの子みたいな正確でしたらもっと早くから私に心を開いてくださったでしょうか」


「さぁ?でも、カトラテちゃんはそのままが1番だよ。今の殿下が好きなのは、今のカトラテちゃんなんでしょ?」


「ふふっ。ですわね。いけませんわ。せっかく殿下が愛してくださる自分だというのに、自信を無くしかけました」


刺激的な2人であったことも間違いない。

学園まで入ってこられたら確実に強い影響を受けていただろうなとは思う。

特にあの平民の子にはどんな形でかかわることになっても振り回されたことは間違いない。

私、あっちの国で召喚されなくて幸せだったかも。


なんて、思ったことが運の尽きなのか。

何にしてももう会うことはしばらくないだろうと思っていたというのに、


「お久しぶりです聖女様!」

「改めて治療して頂いたこと、感謝申し上げます」


学園の制服を着て、私に声をかけてくる2人。

なんと、2人が学園に留学してくることになりました。

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