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13/21

11:1人だけ

「…………ご、ご無礼を、お許し、ください」

「お許しください!!」


私に向かい頭を下げる1組の男女。

男の子の方は顔も青白く、今にも命の灯が絶えてしまうんじゃないかと思うくらいには衰弱している。逆に女の子の方は非常に元気で、ハキハキしているね。

対称的な2人だけど、様子を見る限り女の子の方が男の子を担いでここまでやってきたっぽい。


では、そんな2人が誰なのか。

実をいうと私も女の子の方の事はよく分かっていないんだけど、


「いえいえ。もとより殿下の治療をするという目的ですので。お気になさらず」


男の子の方は、どうやら今回目的だった王子様みたい。体調が悪いって話だし、そういう事ならここまで顔色が悪いのも納得だよね。

…………なんて考えるのは甘いかな?

当然ながら王子様がこんな少人数で来るなんて考えにくいよね?今見えている護衛なんて、たった3人だし。

見た目からして強いのは間違いないと思うけど、それでも私の待遇を思えば3人なんて言うのは王子としてはあり得ない数だと思う。

だから、偽物と言われた方が納得できる。


と、思うのが普通なんだろうけど、


「しかし、こんな少数でよくここまで来れましたわね。殿下が本物であることは間違いないと思いますけど」


「カトラテ嬢は、殿下の事を見たことが?」


「ええ。何度かお見かけしたこともありますし、簡単なものではありますがお話もしたことがございますわ。その時から成長はされていますけど、偽物とは考えにくいですわね」


カトラテちゃんから本物だという保証をされた。

しかもそれだけではなく、私が相談などをしていたこちらの国の担当者の人も、そして向こうの国の兵士の人も認めてくる。

こうなると、偽物と言う線は考えづらくなる。もちろん影武者と言う線も考えられるけど、それでも今この相手を王子様だとして対応する以外の選択肢は存在しない。


向こうの国の兵士が保証してくれるというのはある意味安心材料でもある。

もし違ったとしても、そちらの国が本物だと言ったから信じてしまったって言い訳できるしね。どちらかと言えば、そちらの国の人間に騙されたなんて言って被害者ぶることもできてしまう。

そんな私の思惑を知りはしないだろうから頭の中で色々と計画している間にも話は進んで、


「殿下はやせ細ってるので軽くて運ぶのが簡単でした!さすがに山を越えたりするのは大変でしたけど、それでも頑張ればもう少しタイムを縮められた気がします!」


「ん?その口ぶりからすると、あなたが殿下を?」


「はい!お屋敷からここまでおんぶして走ってきました!途中で騎士の皆さんにも手助けしてもらったりはしましたけどね!」


ここで女の子の方の事が明かされ始める。

どうやら、この子が王子を運んでやってきたらしい。病人を背負って走るとかその病人にとって良い事なのかどうかは分からないけど、素直にその体力はすごいと思う。

私だって魔法ありでも馬車で進む距離を走っていくなんてきつい気がするから。それに人という余計な重りを背負った状態でとなるととてもではないけど無理だよね。


「その口ぶりからすると、あなたは騎士の方と言うわけでもないんですね」


「はい!私はただの平民です!殿下には実家のお店でよく買い物をしてもらったりしています!」


「なるほど?殿下に雇われているというわけでもないのですか」


王子との関係性をはっきりとは理解できていないけど、とりあえず雇用者と従業員なんて間柄ではないらしい。しかも、平民と王子と言うのがまた何とも不思議。

とは思うんだけど、なんとなく聞き覚えがなくもない間柄なんだよね。

前の世界では、天真爛漫な少女と病弱だけど何か魅力のある王子って割と聞いたことのある設定な気がする。

つまりこれは、


「恋人関係、といったところなのでしょうか?」


「へぁ!?違いますよ!?私と殿下が釣り合うわけないじゃないですか~」

「えぇ…………あぁ。うん。違う」


驚きつつも、一切照れた様子はなく否定する女の子。そして、その質問に少し顔を赤くしたものの、女の子の反応で少し悲しげな顔をしながら否定する王子。

これは間違いなく王子の方は脈ありだね。


カトラテちゃんもそれには気づいているようで、興味深げな、そしてどこか温かい視線を2人に送っている。

イメージ的に身分差とか許さないようなタイプだと思うんだけど、王子と結ばれたことで恋愛面に関しては少し懐が広くなっていたりするのかな?


「ここまで運んできたという事からてっきりそうなのかと思ってしまいましたが、違うのですね。では、お詫びと言うわけではないですが治療の準備を始めましょう」


一旦恋愛の話はやめさせてもらって、代わりに私は魔法の準備に入る。

ここまで話している間に運ばれてきた王子の方もある程度は落ち着いてきたみたいで、魔法を使っても問題ないような状態になってきてるみたいだからね。


とは言っても、すぐに魔法をかけて完了と言う流れにはならない。

まずはいくつか打ち合わせをする必要があって、


「ここで治療をするという事でお約束した件は果たせたと考えてよいのでしょうか?」


「内容とは若干違いますが、結果は同じですので問題ないでしょう」


「我が国としては、用意していたものが無駄になる、が」


「殿下がそんなこと気にしてどうするんですか!自分が助かることをまず第一に考えてください!!」


向こうの国は私の歓待に向けて色々やっているからここで終わらせてしまうとそれが全て無駄になってしまうみたいだけど、約束自体は果たせるから問題ないという事みたい。

王子の方もそれで問題にはならないと言っているし、間違いはないはず。


ということで、こうなれば後は話が早い。

もう難しいことも特にないから、さっさと魔法をかけてしまって、


「…………はい。これでどうでしょうか?」


「た、立てる。息もしやすい」


「そんなにすぐにですか!?あんなに神官さん達が苦労してたのに?これが、聖女様の力!」


王子は体が軽いと言って自分の体をあちこち見ている。

その顔色はまだ少し青白いものの、最初に見た時ほどの深刻さはない。

治療完了、と考えて良さそうかな。


平民の女の子もその様子を見て大はしゃぎ。

私にキラキラした目を向けてきてる。


「では、これで治療は完了という事で私は帰路につかせていただきますね」


「え!?もう行っちゃうんですか!?」


「ええ。あまり長くとどまっていると、どんどん人が集まってきてしまいそうですので。この国にも病気やけがで困っている方は大勢いらっしゃるようですからね。いつまでもここに留まっていられない以上、早く戻らないとせっかく来ていただいたのに治療できないという事になってしまいます」


「え?…………あっ、あれってそういう!?」


私がもう戻ると理由もセットで伝えると、平民の女の子は驚いた顔をする。どうやら、人が集まっている理由はよく分かっていなかったみたいだね。


「あの人たちは、治してあげる対象ではないんですね。私の連れてきた殿下だけが…………」


「…………俺も悪いとは思っている。しかし、国が取り付けられた約束がそこまでだったんだ」


おっと、平民の子の顔が曇っちゃった。

ここまで大勢集まって誰も治療されないかもなんて思ったら、それはこんな顔にもなるかもね。


「ふむ。では、これを殿下への貸しと言う形にするのでしたら、ここに集まっている皆様に限って治療をしても構いませんよ」


「本当ですか!?…………殿下!」

「分かっている…………聖女様。お願いしてもよろしいでしょうか?」


「はい。かしこまりました」


ここの集まっている人達をどうにかしないと私たちも戻ることが大変になるから、最初から今いる人たちにだけは魔法を使うつもりであった。

それを王子への貸しと言う形に変えられたのなら、この数を無償で治療したとしても国から文句を言われるという事もないはず。

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