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12/21

10:集まって来ちゃった

「見てくださいまし。このお花。綺麗ではありませんこと?」


「本当だ。かわいい~」


「帰りにでも種を買ってお屋敷で育てたいですわ」


「いいね。でも、確かこの花って他の植物よりも必要な水の量が多いとかで育てる難易度が高いらしいから気をつけてね」


「なるほど。庭師に相談しながら育ててみますわ」


道中は馬車での移動だけど、たまに外に出て休憩したりもする。

カトラテちゃんと一緒に華やかな会話をしながら過ごしていれば、あっと言う間に日程の半分ほどは過ぎ去っていった。

すでに国境は超えているらしく、隣国の迎えの兵士とも合流済み。微妙にこちらの国の騎士と張り合うようにするときもあるけど、基本的には問題なく行動で来ているかな。


ただ移動していると心配事がいろいろと頭に浮かんでくるから、そのことをこの集団のまとめ役みたい人に相談したりもしている。

例えば、


「道中で御病気の方などと出会った場合は治してしまってよいのでしょうか?目的は王子様の治療という事ですが、道中であれ割く時間が多くなるという事もないと思うのですが」


「え?いや、そのぉ…………少々お待ちください。協議してまいりますので」


私が聖女っぽく振舞うためにはどうしたらいいか、とか。

直接的にそう言っているわけではないけど、結局言いたいことの意味は同じ。民衆に魔法をかけて回復させてあげるという事を目的としているわけではないと言われているけど、逆に言うとやったら絶対ダメだとも言われていない。

もちろん積極的に人と関わって困っている人を治してあげるという事をさせてはもらえないだろうけど、それでも道中で挨拶をする人や見かける人に困ってる人がいるなら回復魔法をかけるくらいはしないと聖女らしくない。


ただ、それはそれで問題もある。

近くに行けば回復をしてもらえるなんてことになれば、民衆が集まってきかねない。それでは結局止められていたような民衆の治療をしてしまうことになるし、国としても利益が少なくなってしまう。

だからこそ、良い折衷案がないかと思って偉い人に丸投げしてみたというわけ。

申し訳なくは思うけど、常に弱い立場の人のことを思う聖女らしさってものをアピールできたんじゃないかな?


「あまり困らせては駄目ですわよ」


「あははっ。ごめんごめん」


カトラテちゃんがたしなめてくるから、私は笑ってごまかす。カトラテちゃんには、これが嫌がらせに近い物に見えたみたい。

でも、私だってただ不安になって聖女っぽさをアピールしたくなったからこんな相談をしたわけではない。

どうしても事前に決めておきたいという理由があったの。

もちろん結局のところそれは不安になったからと言うものが根底にはあるんだけど、


「もし私が来るっていう事を分かってるなら、民衆が押しかけてくることもあるんじゃないかと思って。だから、先に対応は決めておいた方が良いでしょ?」


「なるほど?…………確かにないとは言えませんわね。しかし、情報統制はさすがにこの国でも行われていると思いますけど」


「そうだね。でも、わざと流すパターンも考えられない?」


「わざと?それって…………」


どういう意味なのか。そうカトラテちゃんが問おうとしたのだろうと思うんだけど、その言葉は中断された。

そして代わりに、カトラテちゃんは一瞬目を見開いて場所の窓から外を見る。

直後、馬車がその動きを止めた。


「外が騒がしいですわね」


「うん。揉め事かな?」


耳を澄ませてみれば、微かに遠くから声が聞こえてくる。その声の大きさや張り具合、そして数などから考えて恐らく揉め事が起きているものと思われる。

暫く待っていればすぐに情報を伝えに来てくれる人がいて、


「聖女様。申し訳ありません。実は、聖女様にけがなどを治してほしいという者達が大勢押しかけてきておりまして。追い払おうとしてもうまくいかず、出発のためにはもうしばらくこちらに留まっている必要がございます」


「そうなのですか?それは大変ですね」


予想はしていたけど、私が言葉にしていた通り一般の市民が大量に押しかけてきてしまっているらしい。

ここまで私の懸念の通りになると、裏にいるのは隣国の人と考えてよさそうだね。

ならば、こちらも打つ手はすでに決めてある。


私は一度考え込み迷うようなそぶりを見せた後、


「うぅん。ここで皆さんを治療したとしても、またきっと同じような方が大勢いらっしゃいますよね?」


「それは…………最善は尽くしますが、ないとは言えないかと」


「では、一度仕切り直しましょうか。大変申し訳ないのですが、いつまでもそれではたどり着くことができないでしょうし来た道を引き返して国と連携をとれるようにしましょう」


「はっ!?し、しかし、それは」


「いつまでもたどり着かないならばここに留まり続けるのも良くないでしょう。しかし、こうして集まってきた一般の方々を傷つけるなど本意ではありません。苦しむ者を更に傷つけるなど、決して良い事とは言えませんから。ですので、ここは両国に連携を取ってもらうためにも私たちがいつでもそれに従えるよう一度引き返しましょう」


私は笑顔で言い切る。

これがこちらの国にとって最善かは分からないけど、私の動きとしては正解だと思うの。

無理に進もうとすれば人を傷つけるか、もしくはそれまでに寄ってくるすべての人を治すかしか選択肢がないんだから。

一度私は戻って、国同士で協議してもらった方がよほどいい。


私がこうして断言したわけだから、周囲の人も頷かざるを得ない状況にもなっている。

向こうの国の人とも打ち合わせをしてはいるようだけど、それはそれで構わない。

もしここで焦って向こうの兵士が自国の民を傷つけるなんて展開になれば、余計に私はそっちの国に行きたくないと言えるようになるんだから。離脱する良い口実になる。


「もしどうしても民衆の皆様を振り切れないという時にはおっしゃってください。一度だけなら私が魔法を使いますので。その時に周囲にいる方々は追ってくる理由がなくなるはずです」


「かしこまりました。ご配慮に感謝いたします」


一度まとわりつく人たちを治療してしまえば、戻っていく限り周囲に新しく何かがまとわりついて来るなんて言うことはなくなるはず。

これが国の内部の方に入り込んでいたというのならば戻る途中にも大量に待ち構えていたかもしれないけど、まだそこまで深いところにはいないからそこまで問題にはならないはず。


なんて考えて私が勝手に納得していると、


「ここまで、想定されていたんですのね」


「一応、だけどね。襲撃までされたことを考えて、警戒だけはしてたよ」


「想定不足でしたわ」


苦々し気な表情を浮かべるのはカトレアちゃん。

この展開を想像していなかったことも悔しい理由ではあるけど、1番大きなその表情の理由は私が想定済みだったことじゃないかな?貴族として教育されていて私よりもこういったことの経験はあるはずなのに予想出来ていなかったというのはプライドも傷つくはず。


ただ、だからと言ってカトラテちゃんがダークサイドに落ちるわけではない。

私に思うところは生まれてしまっただろうけど、それでもどちらかと言うと自分の成長の糧にするなり新しい今後の展開を考えるなりしようと考えたようで、


「聖女様を困らせ、あわよくば多くの民を勝手に治させてしまおう、と言う考えですの?」


「真意は分かりませんが、恐らくそうでしょうね」


向こうの国としては、ここで私が全員を治療しながら進んでいくという展開を期待していたはず。

聖女と言う役割から考えればそういうことをしてもおかしくないもんね。

だからこそ、私はそれにまったく沿わないわけではないけど1番嫌がるだろう形を考えて行動した。


私が関わることさえなければ、聖女らしくない部分を国が担ってもらえるわけだし。

ただ、そうした私の考えはある程度はあっていたんだろうけど、まだ甘いと言わざるを得ないものだったみたい。

何せ、


「せ、聖女様!緊急のご報告が!」


「はい?どうされました?」


「殿下が!今回治療の対象となる殿下がこちらまでやってこられているとのことです!!」


「…………え?」

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